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Hitachi

株式会社 日立コンサルティング

2016年8月1日

脳を測ると何が分かるのか?

株式会社 日立ハイテクノロジーズ
イノベーション推進本部 本部長付
ブレインサイエンスビジネスユニット長 長谷川 清 氏に聞く

日立の脳科学研究と光トポグラフィ技術

日立の脳科学研究の始まりは、1980年代へ溯る。脳活動を非侵襲(ひしんしゅう)、つまり針を刺したり切ったりするなど、傷をつけずに見ることはできないか、しかも簡便な装置で可視化できないか― それが研究開発の動機だった。その成果として世界に先駆けて開発したのが、1995年に発表した「光トポグラフィ」だ。その名こそ一般にはあまり知られていないが、すでに脳科学や認知科学、心理学、教育学などの分野で、その有用性が認められている技術である。

その原理は、脳内の活動に伴う血流の変化を、頭皮上から近赤外線を照射して測定するというもの。血液中に含まれるヘモグロビンの濃度変化を光の反射により検知することで、脳の表層にある大脳皮質の脳活動を捉える。脳計測に使われるfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)やPET(陽電子断層装置)など、そのほかの非侵襲的な装置に比べても、光トポグラフィ技術は実に簡便で、日常に近い環境で計測できるのが大きな特長だ。しかも、微弱な光を使うため人体に無害で、他の方式では難しい赤ちゃんの脳計測に活用できるほか、複数人で同時に計測できる点も大きなメリットである。

脳計測技術をビジネスへ展開

写真:長谷川 清 氏
株式会社日立ハイテクノロジーズ 長谷川 清氏

この光トポグラフィ技術のビジネス展開を図る使命を担うのが日立ハイテクノロジーズである。ブレインサイエンスビジネスユニットをけん引する日立ハイテクノロジーズの長谷川清は、次のように説明する。

「2001年に日立が医療用途向けに計測機器の販売を開始して以来、現在では日立ハイテクノロジーズがウェアラブル型の小型計測装置も発売するなど、病院や大学などの基礎研究や応用研究の場だけでなく、ビジネスの現場でも脳計測技術の活用が始まっています」

日立ハイテクノロジーズが特に注力しているのが、(1)モノづくりへの活用、(2)ニューロマーケティングへの活用、そして(3)Brain Scienceマークの付与に関するコンサルテーションの3事業だ。

「モノづくりへの活用は、モノづくりにおける前段階の事前調査やデザインの策定などへの応用です。従来のアンケート調査よりも高精度の結果が得られるとして、すでにさまざまな成果が出始めています。ニューロマーケティングへの活用は、モノづくりの後工程の宣伝や販売へ脳計測を活用するという取り組み。製品やサービスを見たり体感したりして、脳のどこが反応したのか/しなかったのかを明らかにすることで、評価やマーケティングに活用しています。特徴的なのが、Brain Scienceマークの付与です。これは、製品開発などに脳科学が適切に活用されたかどうかを第三者の専門家が審査し、マークを付与するというもので、製品などの差別化に寄与します」(長谷川)

すでに日立の脳科学ビジネスは動き始めているが、脳科学は日進月歩で進展している現在進行形の研究分野でもある。脳を知ることは人間を知ることであり、今後、どのような知見が生み出されるのか。そして、脳科学ビジネスは、これからどのような展開を見せることになるのだろうか―。

長谷川 清氏 プロフィール

2014年4月、日立ハイテクは日立製作所から研究用途・産業用途向け携帯型光トポグラフィ装置の販売、サービスおよびコンサルテーション事業の移管を受けた。長谷川氏は日立製作所時代から進めてきた各種プロジェクトを継承するメンバー。