ページの本文へ

地方自治体における民間委託の更なる推進について

小林 雅貴 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

2016年1月4日

人口減少・高齢化が急速に進行し、地方財政は依然として厳しい状況にある一方、社会環境の変化に伴い行政サービスに求められるニーズは多様化しており、地方自治体においては、限られた資源の中で、質の高い行政サービスを継続的かつ効率的・効果的に提供していく必要に迫られています。
こうした中、政府が平成27年6月30日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2015」(以下「骨太方針2015」という。)において、歳出改革の基本的考え方として行政サービス改革の必要性が掲げられ、地方自治体に対しても、総務省から地方行政サービス改革の推進に係る留意事項を定めた通知が発出されるなど、行政サービス改革の機運が改めて高まりつつあります。

地方自治体においては、これまでも、事務の集中化・民間委託、指定管理者制度活用、PPP/PFI導入、情報システムクラウド化等、様々な取組みを実施し、行政サービス改革を推進してきています。しかしながら、特に「専門性」が必要な業務やサービスの改革については、窓口業務の民間委託等、新たな取組みも見られるものの、一部の先進自治体に留まっているのが実情です。
地方自治体を取り巻く昨今の状況を踏まえると、このような「専門性」が必要な業務やサービスについても、より一層の効率化を進め、全庁的に民間活力等を積極的に活用した改革が必要であり、そこで捻出された人的資源を、真に行政が取り組むべき業務やサービスに転換していくことが求められています。特に、財政状況が厳しく、人的資源の確保が喫緊の課題となっている基礎自治体(市区町村)において、この傾向が強いものと想定されます。
また、各地方自治体に対しては、マイナンバー制度の導入に伴い、業務やサービスのあり方全体について継続的な見直しが求められているところであり、民間委託も含めた行政サービス改革を検討するうえで最適なタイミングと想定されます。

本コラムでは、こうした社会情勢に鑑み、①行政サービス改革を巡る国の直近の動向(第1章)を整理したうえで、②地方自治体における民間委託に係る現状と課題(第2章)、及び③課題への対応策(第3章)について述べ、それらを踏まえ、④新たな民間委託の取組を効率的に検討するための手法(第4章)をご紹介します。

1. 行政サービス改革を巡る直近の国の動向

「骨太方針2015」の概要

政府が公表した「骨太方針2015」では、経済・財政改革の柱の一つとなる「歳出改革」について、「公共サービスの無駄をなくし、質を改善するため、広く国民、企業、地方自治体等が自ら意欲を持って参加することを促し、民間の活力を活かしながら歳出を抑制する社会改革」と定義づけられています。
さらに、「歳出改革」は、「聖域なく徹底した見直しを進める。また、地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。」とされていることから、これまで行政サービス改革が進んでいなかった地方自治体の業務領域についても、積極的に民間活力を活かした見直しを検討する対象となり得るものと捉えることができます。
この「歳出改革」については、基本的な考え方として、国、地方、民間が一体となって、①「公的サービスの産業化」、②「インセンティブ改革」、③「公共サービスのイノベーション」に取り組むこととされており、下記のとおり、各取組において、地方自治体にも関わる具体的な方針が示されています。
また、「歳出改革」の基本的な考え方を踏まえ、主要分野ごとの基本方針が示されており、地方行財政改革の分野では、地方自治体における経営資源の有効活用やIT化のための具体的な方策として、業務改革の推進が掲げられています。

【図表1】「経済財政運営と改革の基本方針2015」の概要

「経済財政運営と改革の基本方針2015」の概要図

(「経済財政運営と改革の基本方針2015」より抜粋) 

民間委託の加速化と新たな業務領域への拡大

行政サービス改革にあたっては、様々な手法を検討することが可能ですが、「骨太方針2015」では、特にこれまで取組の進んでいない業務領域として、「窓口業務などの専門性は高いが定型的な業務」(以下、「専門定型業務」という。)の民間委託の推進について、個別具体的に言及しており、汎用性のある先進的な改革に取り組む市区町村数を2020年までに倍増させることとされています。
従来、広く実施されてきた「専門性を要しないが定型的な業務(例:総務事務、清掃、給食、ごみ収集、夜間警備、公用車運転、道路維持補修等の業務)」(以下、「汎用定型業務」という。)の民間委託に留まらず、「専門定型業務」についても民間委託を推進することが明示的にされたことになります。特に、住民サービスに係る住記、税、国保、福祉等の基幹系業務は、「専門定型業務」に分類される業務を多く含み、このような行政サービスの根幹である領域についても、民間委託を検討することが求められているものと想定されます。
なお、「非定型業務」は、専門・汎用の区別無く、民間委託に馴染まないものとされています。これは、「非定型業務」が、自治体職員自身の高度な判断が必要な業務や状況に応じて柔軟な対応が必要な業務であり、業務を遂行するうえで自治体職員の直接的な意思決定が必要不可欠であるという点に起因します。一方、「定型業務」については、専門・汎用を問わず、業務範囲や役割分担が明確にされていれば、民間事業者でも業務を遂行することが可能と解されています。

【図表2】地方自治体の業務分類(例)

地方自治体の業務分類図

優良事例の公開とインセンティブの強化

「骨太方針2015」においては、BPR等を通じた業務改革の優良事例等を全国展開することとしています。また、積極的に改革を進める地方自治体に対しインセンティブを強化する仕組みを構築することで、地方自治体の先進的な取組を支援していくことが明示されました。地方自治体においては、従来の手法に留まらず様々な民間活力を活用し、自発的に行政サービス改革を推進する環境を構築することが期待されています。
また、総務省からも、地方自治体に対して「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について(平成27年8月28日通知)」が発出されました。本通知では、業務改革の成果について、「各自治体における取組状況を比較可能な形で公表し、取組状況の見える化を実施」し、総務省において、「これらの進捗状況について毎年度フォローアップし、その結果を広く公表」するとしており、民間委託の推進状況が、これまで以上に注視されることとなります。これらの推進状況は、インセンティブとして地方財政政策に反映されることが想定され、各自治体には、より積極的かつ自主的な対応が求められています。

2. 地方自治体における民間委託に係る現状と課題

地方自治体における民間委託の現状

地方自治体において「専門定型業務」の民間委託の推進が求められる要因として、従来型の「汎用定型業務」の民間委託が既に多くの地方自治体で取組が進んでおり、十分な効果を享受できているため、今後、他の業務領域への拡大が期待されているという点が考えられます。
総務省「地方公共団体における行政改革の取組状況(平成27年3月31日公表)」によると、「汎用定型業務」について、政令指定都市では約93%以上、市区町村においても総務事務や給食等、一部で民間委託が進んでいない業務もありますが、約78%以上の比率で民間委託が進んでいます。また、近年は、指定管理者制度の活用を含めた公共施設の維持管理等について、多くの地方自治体で積極的な導入が進められています。

【図表3】地方自治体における民間委託の実施状況

政令指定都市における民間委託の実施状況

市区町村における民間委託の実施状況

(総務省「地方公共団体における行政改革の取組状況に関する調査について(平成27年3月31日公表)」より抜粋

民間委託に求める目的の変化

「専門定型業務」の民間委託の推進が求められている要因としては、前述の要因の他、民間委託に求める目的そのものが変化しつつあるという点も考えられます。
従来型の「汎用定型業務」の民間委託は、コスト削減を主な目的として推進されてきました。他方、「専門定型業務」については、既に人材派遣を活用しているケースや、臨時職員・非常勤職員等が従事しているケースが多く、民間委託した場合のコスト削減効果には限界があり、単にコスト削減を目的して導入することはできません。また、その「専門性」から、委託する事業者側にも一定の知識・スキルを保有した人材の活用が求められます。
「専門定型業務」の民間委託は、行政サービスの多様化に対応しつつ、そこで捻出された人的資源を最適に配置することにより、自治体経営全体を効率化していくことを目的として推進していく必要があります。人材派遣のような単なる人員の差替えではなく、専門的な業務の知識・スキルを汎用的に活用できるよう蓄積し、民間委託可能な業務は、民間事業者が独立して継続的に事業が遂行できるようにしたうえで、政策立案や行政経営といった真に職員が実施すべき分野に、人材を転用していくことが期待されています。
特に、住記、税、国保、福祉等の基幹系業務は、自治体業務に占める規模が大きく、多くの職員が従事しているため、全庁的な検討を行うことにより、民間委託した場合の効果がより期待できるものと考えます。また、基幹系業務を担当する部門は、市民との直接的な窓口であり、市民ニーズを直接的に認識・共有できる立場にあるため、本来、市民ニーズやそこで得た経験・知見を政策立案や行政経営に活かす役割を担っています。「専門性」があっても定型的な業務は可能な限り民間委託を行ったうえで、そのような役割により多くの人材を割り当てることにより、行政サービス全体の質の向上に繋がるものと考えます。

「専門定型業務」の民間委託を推進するうえでの課題

このように、地方自治体においては、「専門定型業務」の民間委託を新たな取組として推進していくことが期待されていますが、これまでこのような取組が積極的に推進されてこなかった要因として、以下の課題が挙げられます。
①「公権力の行使」の課題
②「指揮命令」の課題
これらの課題を解決するためには、どのように「業務範囲の明確化」を実現するのかが重要となります。
以下、それぞれの課題について、なぜ「業務範囲の明確化」が求められるのか、現時点で公表されている国の考え方に基づいて整理します。

①「公権力の行使」の課題

各業務の所管法令上、個別具体的にその範囲が定められているわけではないため、従来、どこまでが「公権力の行使」となるのか曖昧な部分がありましたが、2006年「公共サービス改革法(市場化テスト法)」の施行以降、順次、各省庁の通知により委託可能な業務範囲についての方針及び留意事項が示され、その範囲が明確になりつつあります。
「公共サービス改革法」では、「特定公共サービス」として選定された「窓口6業務(選定当時)」について、市場化テストを実施することにより「法律の特例」を認め、自治体職員が官署内に常駐していなくても民間委託することが可能となりました。さらに、別途、内閣府等の各種通知において、「公共サービス改革法」に基づかなくても、地方自治体の適切な管理下であれば、受付・引渡し等に加え、端末操作、台帳への記載、帳票作成等を委託できることが明確化されました。
但し、この場合においても、最終的な審査、決定等、判断行為については職員が実施すること等の制約が明記されており、民間委託を検討する際には、この通知の内容等を踏まえ、委託できる業務範囲と委託できない業務範囲を明確化する必要があります。

【図表4】民間委託に係る国の動向

民間委託に係る国の動向図

②「指揮命令」の課題

これまで、地方自治体においては、「専門定型業務」に人材派遣を活用するケースが多く見受けられましたが、前述のように民間委託に求める目的がシフトしたことに伴い、民間委託を推進することが望ましいと考えます。但し、委託契約にあたっては、委託者から委託先の従事者に対して、直接「指揮命令」することが認められておらず、そのため、「指揮命令」とならないよう業務範囲や役割分担、運用方法等を明確にしておく必要があります。
これは民間事業者間の委託契約においても当然遵守しなければならない事項ですが、特に、地方自治体と民間事業者間においては、民間事業者が上記「公権力の行使」に関連する業務を遂行する際に、自治体職員から「指揮命令」を受ける状況に陥りやすい傾向にあり、適正でない契約形態(偽装請負)と判断された事例も多く発生しているため、十分な注意が必要となっています。国においても、内閣府が「地方公共団体の適正な請負(委託)事業推進のための手引き」を公表するなど、留意して進めることを求めています。
実際に、戸籍業務の民間委託を行ったある自治体において、委託先従業者からの職員への疑義照会の手法について労働局より是正指導を受け、委託契約の変更や業務範囲の見直し等を行わざるを得ない状況となった例があります。
内閣府は、このような状況も踏まえ、2015年6月に前述した内閣府通知の内容を改訂し、戸籍業務等の委託可能な業務範囲について、具体的な記載を追加しました。今後、「専門定型業務」の民間委託を加速していくためには、国においても委託可能な業務の範囲をさらに明確にするなど、より一層のサポートが求められているものと考えます。

【図表5】民間委託に係る国の方針

民間委託に係る国の方針図

3. 課題への対応策 ―「業務範囲の明確化」―

「業務範囲の明確化」の方法

ここまで、①行政サービス改革を巡る国の直近の動向を整理したうえで、②地方自治体における民間委託に係る現状と課題について述べてきました。
地方自治体においては、新たな民間委託の取組として、「専門定型業務」における民間委託の推進が期待されており、一方、その検討にあたっては、「公権力の行使」や「指揮命令」の課題に適切に対応するため、どのように「業務範囲の明確化」を実現するのかが重要となります。
「業務範囲の明確化」にあたっては、各省庁からの通知等を踏まえ精査する必要がありますが、現時点で公表されている通知では、委託可能な業務内容の詳細が具体的に明らかとなっていない点も多く見受けられます。そのため、業務内容を詳細に分析したうえで、「公権力の行使」の業務範囲を定義し、民間委託する業務範囲と明確に切り分ける必要があります。また、委託する業務について、職員から事業者への「指揮命令」が発生しないよう運用方法を検討する必要があります。
例えば、窓口業務であれば、市民からの一次窓口(案内・受付)、システムへの入力、帳票出力・交付・発送等の業務を委託し、自治体職員の判断が必要となる市民からの相談、入力・出力内容や受領書類等の審査・点検、住基ネット端末の操作等の業務を職員が実施する等の切り分けが必要です。また、自治体職員の判断が必要な事象が発生し、民間事業者から職員へ業務を引き継ぐ際に、職員から「指揮命令」を受けたと誤解されるような状況とならないよう、予め具体的かつ画一的なルールや運用フロー等を決定し、作業場所が混在しないよう物理的な措置をとる等、運用方法を詳細に検討しておく必要があります。

【図表6】「業務範囲の明確化」の検討イメージ(例:窓口業務)

「業務範囲の明確化」の検討イメージ図

4. 新たな民間委託の取組を効率的に検討する手法 ―「共通化・標準化」―

「共通化・標準化」の必要性

このように、「専門定型業務」における民間委託の推進にあたっては、「業務範囲の明確化」が重要ですが、さらに、民間委託の検討を効率的に進める手段として、組織間や業務間で様々な要素(業務運用、帳票、システム、制度等)や仕様(運用フロー、帳票様式、システム機能、規則等)を「共通化・標準化」しておくことが有効です。
「業務範囲の明確化」により委託可否の切り分けができたとしても、民間委託可能な業務として、「汎用性」の高い業務と「独自性」の高い業務が混在する状況となります。「汎用性」の高い業務は、組織や業務を超えて「共通化・標準化」可能な業務であり、民間事業者においても先進自治体の取組等をベースとして一定のノウハウを保有しているため、業務を合わせることが可能であれば、詳細な業務の検討は不要となります。一方、「独自性」の高い業務は、自治体独自の処理が多いため、そもそも「共通化・標準化」自体が困難であり、各組織や業務にあった検討を行う必要があります。
民間委託の業務範囲を検討するうえで、「共通化・標準化」可能かどうか(業務を合わせることが可能かどうか)を検討することで、「汎用性」の高い業務と「独自性」の高い業務の切り分けを行うことができ、効率的に業務設計を進めることが可能となります。

【図表7】民間委託と「共通化・標準化」

民間委託と「共通化・標準化」イメージ図

従来型の「汎用定型業務」は、総務事務のように民間事業者においても広く汎用的に実施されている業務のため、既に「共通化・標準化」が進んでいる分野であり、組織や業務毎に精緻な分析を行わなくても、民間委託を容易に検討することができます。
一方、「専門定型業務」は、その専門性から組織や業務により独自の業務が相当程度含まれており、それら「独自性」の高い業務については、組織や業務毎に精緻な分析を行わなければ、民間委託の検討が困難です。そこで、他組織や業務と比較して「共通化・標準化」可能な部分を抽出し、「汎用性」の高い業務はでき得る限り「共通化・標準化」することで、「独自性」の高い業務の精査に多くの時間を費やすことが可能となり、効率的に民間委託の検討を行うことができます。
また、組織や業務を超えて業務を「共通化・標準化」することで、民間事業者は、「共通化・標準化」された業務部分について、他自治体の運用実績等に基づいてノウハウを蓄積し、提供するサービスや人材能力を一定水準に保つことが可能となります。「専門定型業務」の民間委託を一過性のものとせず、継続的に推進するためにも「共通化・標準化」を実施することが有用と考えます。

※本コラムでは、「共通化・標準化」を以下のように、定義します。
・「共通化」・・・組織間や業務間で共通する要素(業務運用、帳票、システム、制度等)を抽出し、統合すること。
・「標準化」・・・抽出した共通する要素について、その仕様(運用フロー、帳票様式、システム機能、規則等)を統一すること。

具体的な整理手法(基礎自治体(市区町村)の基幹系業務の例)

以下、基礎自治体(市区町村)の基幹系業務を一例として、民間委託の検討を効率的に検討するために「共通化・標準化」を整理する具体的な手法をご紹介します。

①整理にあたっての二つの側面

基礎自治体(市区町村)の基幹系業務について、委託対象を整理するためには、二つの側面から検討を行う必要があります。一つは、窓口業務や交付業務など業務プロセスの区分に応じて精査する側面(「A.業務プロセス」面)、もう一つは、住記業務や税業務など法・制度的な区分に応じて精査する側面(「B.業務(制度)」面」)です。
それぞれの側面により「共通化・標準化」を検討するにあたって留意すべき事項が異なるため、それぞれの視点から多角的に検討する必要があります。また、二つの側面について、複合的に検討する必要があるため、下図のように、それぞれの側面をマトリックスで整理することが有用と考えます。
この際に、運用上「共通化・標準化」が困難な業務や、法・制度上委託不可となる制約が多い業務等については、委託する業務範囲から除外し、個別での民間委託を検討します。
なお、封入・封緘や情報システム保守等の業務は、従来から委託が進んでいる「汎用定型業務」であり、「共通化・標準化」可能な要素としての抽出が容易であるため、各業務共通の付帯業務として纏めて精査することが可能です。

【図表8】「共通化・標準化」整理イメージ

「共通化・標準化」整理イメージ図

②「共通化・標準化」のための基礎情報の整理手法

「共通化・標準化」を検討するにあたっては、対象となる業務毎に、業務面、体制面、システム面、制度面など多角的な観点から、様々な要素(業務運用、帳票、システム、制度等)や仕様(運用フロー、帳票様式、システム機能、規則等)について網羅的に調査・分析する必要があります。
業務面で「共通化・標準化」可能な場合であっても、システム面では不可といったケースが発生する可能性があるため、各要素や仕様について「共通化・標準化」を阻害する要因を抽出し、詳細に分析したうえで、委託可能な業務範囲を検討します。 分析・精査が必要な具体的な情報としては、役割分担、人員情報(担当者・人数・作業時間等)、入出力帳票・データ、関連システム、法・制度的制約、業務実施場所、前提条件・制約条件、関連業務等多岐に渡ります。

【図表9】詳細分析表(例:窓口業務)

詳細分析表イメージ図

③実現可能性のあるプラン策定

前述のように、民間委託の検討にあたっては、様々な要素や仕様について、多角的・網羅的に検討する必要があり、全ての業務を一律に検討することはできません。自治体それぞれの状況により、様々な検討パターンが想定されますが、どの業務を「共通化・標準化」すべきか、またどの業務から民間委託すべきかなど優先順位を決めたうえで、実現可能性のあるプランを策定する必要があります。
検討にあたっては、まず、「共通化・標準化」可能な要素・仕様を調査・分析し、業務横断的かつ標準的な共通モデルを構築することが有用と考えます。構築した共通モデルを基礎として、関連する他業務に展開するなど、柔軟性のある段階的なプラン策定が可能となります。
例えば、窓口業務について、住基・税・国保等業務横断的に「共通化・標準化」可能な要素・仕様を纏めてモデル化し、その後、各業務に展開するといったプランを検討することが有用です。

【図表9】検討プラン(イメージ)

検討プランイメージ図

5. 最後に

「専門定型業務」における民間委託の実現に向けて ―「業務範囲の明確化」と「共通化・標準化」―

地方自治体においては、「専門定型業務」における民間委託推進の機運が高まっています。その検討にあたっては、「業務範囲の明確化」が必須であり、「公権力の行使」の対象業務を特定し、職員から事業者への「指揮命令」が発生しないよう適切な運用方法を検討する必要があります。また、組織間や業務間で「共通化・標準化」可能な業務を整理することにより、効率的に民間委託の検討を進めることが可能となります。

地方自治体における豊富な実績・知見に基づいたソリューションの提供

日立コンサルティングでは、地方自治体における民間委託を含めた行政サービス改革支援の実績・知見を豊富に有しています。国の法制度や指針等を正確に把握・精査したうえで、業務分析や運用設計を実施するとともに、先進自治体の事例等に基づいた知見・ノウハウを活用し、行政サービス改革の効率的な推進を支援します。
行政サービス改革について、どのように進めたら良いかわからないという方がいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせください。

本コラム執筆コンサルタント

小林 雅貴 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

人口減少・高齢化が急速に進行し、地方財政は依然として厳しい状況にある一方、社会環境の変化に伴い行政サービスに求められるニーズは多様化しており、地方自治体においては、限られた資源の中で、質の高い行政サービスを継続的かつ効率的・効果的に提供していく必要に迫られています。
こうした中、これまで取組があまり進んでこなかった「専門性は高いが定型的な業務」における民間委託の推進等、新たな行政サービス改革への期待が高まりつつあります。
本コラムでは、こうした社会情勢に鑑み、地方自治体に係る行政サービス改革の動向や課題等を整理し、民間委託を効率的に進める具体的な手法等についてご紹介します。

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。

Search日立コンサルティングのサイト内検索