芦辺からのメッセージ

日立コンサルティングでソートリーダーとして活動する芦辺に、本戦略で伝えたいメッセージ、戦略をまとめるまでに至った経緯や、込められた日本への熱いメッセージを聞いた。

―「超ガラパゴス戦略」で伝えたいメッセージとは?

この考えは、世界第2位の経済大国にまで成長してきた、資源を持たない日本という国が、今後、多極化する世界の中でどうやって存在感をだしていくのか、その際どういったアプローチが重要となってくるのか、を主に産業界の視点からまとめたものです。

まず押さえてほしいポイントは、この考えの基底をなしている「超ガラパゴス戦略」フレームワークです。これはモノ・サービスの発祥(日本発あるいは海外発)と市場(日本あるいは海外)の2軸4象限でまとめており、産業全体を俯瞰することで、自らの立ち位置を明確にします。

次のポイントは、フレームワークを用いて展開される4つの戦略実行シナリオです。これはもう一段細分化された方法論まで落とし込んだ策定をしています。これにより、モノ・サービス別のとるべきオプションがある程度みえてくるはずです。

最終的にはモノ・サービスの特徴や背景、企業体力に合わせた、より細分化された取り組みが必要となってくるのはいうまでもありませんが、書籍に収められている4つのケーススタディも含めて、この考えを、日本企業が世界を舞台に活躍するための羅針盤として用いてほしいと思っています。

―「超ガラパゴス戦略」に至った背景は?

私は、コンサルティングを通して数多くのグローバル企業と対話してきましたが、海外における日本企業の活動を見て、いつも感じることは「もったいない」ということです。日本で有力な企業は、押並べて多くの知的資産、世界でも稀にみる高い技術力と実現力を有しています。ところが、グローバルマーケットでみると、良さを上手く表現できておらず、プレゼンスが不十分なために損をしていると常に感じてきました。それは何故か、という問いかけが、今回の「超ガラパゴス戦略」を考察したきっかけです。日本の各産業界がガラパゴス化しているという指摘がITメディアを中心に取り上げられていますが、進化論といった生物学的なアナロジーを、ビジネスの世界における進化とは何かという視点で、日本国内の企業やマーケット動向をあらためて捉えなおしてみたのです。すると、日本国内にしか存在しない素晴らしいモノやサービスが見えてくると同時に、日本発のモノやサービスがグローバルで確立された領域と、そうでない領域があるとわかってきました。「その違いは何か?」そこを起点に研究、整理することから始まりました。

―最後に、日本へのエールを

確かに、日本はこれまで世界の経済発展と歩調を合わせ成長してきましたが、その中身はというと、主張がなかったといえるのではないでしょうか。それが指し示すように、バブル崩壊以降は、経済大国としての世界に向けた発信が薄くなり、盲目的なグローバリズムに対する追従を行ってきました。結果、グローバルでのデファクト化を押し進めてきた米国発の金融資本主義に、企業経営のあり方そのものが振り回されてきました。実際、メディアが伝える日本の姿にも自信が感じられない。このままでは、世界に取り残されてしまうのではないか、という危機感を強く持っています。海外メディアもよく確認していますが、その感覚は日に日に深まるばかりです。

一方、将来に目を向けると、社会的な成熟の進展と共に人口減少が進む日本のマーケットは確実に縮小していきます。隣国では、人口12億超のマーケットが出現しようとしています。そして、米国は「9・15ショック」がもたらした深刻なダメージからの回復に長い時間を要するでしょう。日本企業が対話しなければならないグローバルマーケット、その実体は、多極化した市場であり、長続きする不安定な世界だとみています。

10年以上の北米生活を通して見えてきたことの一つは、世界各国は日本が想像する以上に「狡猾」であるということ。日本の社会・経済に関わるマクロ動向が厳しくなる中、私たち日本人は、何を武器として世界と向き合っていかないといけないのでしょうか。それは、日本のみが持つ強みのはずです。その強みを見極め、「選別」と「集中」を行い、力強く実行する。自らの強みを再発見し、戦略的に活用していくことで、多極化し不安定なグローバルマーケットを制する。

私は、今、日本が世界に対してリーダーシップを確立するチャンスを手にしていると思っています。

『超ガラパゴス戦略』解説

芦辺による『超ガラパゴス戦略』の解説をご覧になれます。
前半は概論、後半が戦略の解説となっています。ぜひ、ご視聴ください。

芦辺洋司 PROFILE

1965年静岡生まれ。
大学卒業後、イーストマン・コダック社に入社。
その後、米国にて大学院に進みMBAを取得。
1992年、KPMG Peat Marwick監査法人ニューヨーク事務所に入社。
監査・税務業務・経営コンサルティングに従事。
1997年、同社日本事務所開設にあたり帰国。
大手ハンバーガーチェーン経営戦略本部を経て、現在日立コンサルティング代表取締役 取締役社長。
趣味は外洋ヨットレース。プライベートな時間は駿河湾にて外洋ヨットのクルーを楽しむ。