グローバル40万人の従業員を擁する 日立グループのITマネジメント改革 株式会社 日立製作所
ワールドワイドで900社あまり、約40万人の従業員を擁し、社会イノベーション事業を中核に据え、幅広くビジネスを展開している日立グループ。ライフラインを担うITマネジメントには、グローバルで共有できる標準的なフレームワークが不可欠だ。そこで日立グループは、COBITをベースにしたIT管理項目一覧表を作成、ITマネジメントレベルの向上を目指している。現在プロジェクトは適用段階に入っており、日立コンサルティングは“ヘルメットを被ったコンサルタント”となって、設計段階に引き続き適用を浸透させるため、グループ各社の現場とのコミュニケーション向上に取り組んでいる。
制度を浸透させるために、方針の全面転換を敢行する

多数の事業部門や事業会社、多くの技術・製品・サービスを持つ日立グループが、グループ内の幅広い事業や技術、ノウハウを組み合わせて顧客と社会に対する価値を創り出すには、ITもグローバルにマネジメントすることが必須である。
こうした観点に立って日立グループは米SOX法への対応を契機に、グローバルなITマネジメントを実現するため、グローバル標準フレームワークであるCOBITをベースに、ITマネジメントフレームワークを標準化することにした。その一環として、グループのIT業務において管理すべき項目を定義した「日立グループIT管理項目一覧表(通称HITCO*)」を作成した。
*HITCO: Hitachi group IT Control Objectives
2007年からは、これまでSOX法対応のために日立グループで適用してきた(1)IT全般統制チェックシート(CLQ/ICOシート)との統合による作業の効率化、(2)日本語と英語、中国語の3カ国語によるチェックリストや解説書の作成、(3)グループ企業を規模別に分類し、小規模子会社における管理項目の絞り込みと適用の容易化──を行い、グループ全体へのITマネジメントの定着に取り組んできた。
ITマネジメントに関する施策の作成と制度適用を担当する日立製作所 IT戦略統括推進本部は当初、制度定着のカギを握るのは海外子会社だと考えていた。「子会社の数は海外が500社を超え、国内の400社と比較すると海外の方が多いため、米国や欧州、中国、東南アジアの各地域本社のIT部門に制度を持ち込み、さらに現地法人各社へ展開しようと考えていました。ところが2008年夏ごろに、制度の適用を理解してくれていると思っていた国内の親会社の賛同を得られていないことが分かりました。そこで方針を大幅に転換し、スタート地点に戻り、国内の親会社に制度の意義やメリットについての理解を得るところから運用設計をきちんと行い、制度の浸透を図っていくことにしました」と、日立製作所 IT戦略統括推進本部 部長の菅宮徳也氏は語る。
一緒に考えて行動するコンサルを要望

こうした観点からIT戦略統括推進本部はプロジェクトの目標を全面的に変更し、運用設計をしっかり行ったうえで、それに基づいて制度を定着させていくことにした。「そこで重要になったのが、このITマネジメント改革プロジェクトに一貫して携わってきた日立コンサルティングの役割でした。同社が持つCOBITに対する知識や英語能力などの高い専門性を生かすことを前提に、日立グループの仲間として一緒に悩み、考え、行動してもらいたい。ちょうど日立は製造業なので、現場でも一緒に立つ『ヘルメットを被ったコンサル』になってほしいと考えるようになりました」(菅宮氏)。
日立コンサルティングはこうした期待に応え、運用設計の立案に主体的に取り組んだ。さらに日立製作所と協力して2009年2月から3月にかけて、グループ会社への説明会を開催した。
「IT管理項目とCLQ/ICOシートを1枚のシートに統合してIT自己評価に使うというやり方はそれまで経験がなかったので、グループ各社の皆様は当初、『本当にできるのだろうか』という心配の気持ちが強いことが分かりました。しかし、説明会やその後のコミュニケーション活動を通じて各社との対話を重ねたことにより、ネガティブな意見もなくなり、ポジティブに一緒に日立のIT自己監査の発展へ協力する姿勢を見せていただける意見も増えてまいりました。ようやく、適用のための条件が整ってきたと実感しています」と日立製作所 IT戦略統括推進本部 技師の佐藤雅彦氏は語る。
グループ&グローバル展開でITマネジメントレベル向上へ

導入の条件を整えたIT戦略統括推進本部は、2009年5月末にスターターキットを配布、HITCOを使ったIT自己評価の作業をグループ各社でスタートさせた。その過程でも日立コンサルティングは共同作業を継続し、グループ各社からの問い合わせや質問に答えITマネジメントの定着に取り組んでいる。
日立コンサルティング マネージャーの上原一浩は、「今回のプロジェクトはいよいよ運用段階に入り、これからが最後に残った大きな正念場だと考えています。同じ日立グループの仲間として現場まで入っていき、約40万人の社員全員とITマネジメントレベル向上のためにコミュニケーションをするという気持ちで取り組んでいきます」と強調する。
日立グループは昔から、現場改善活動である自己監査の取り組みを重んじてきた。IT管理項目による自己評価はIT分野における現場改善活動であり、今後はこのような日立の原点の精神にもつながる活動の海外への展開と定着が大きな課題となる。「これからは日立の自己監査の意義を伝道師のように、グローバルで語っていかなければならないと考えています」と佐藤氏はいう。
このようにIT管理項目による自己監査は、本社がグループ会社とコミュニケーションをとることで逆に現場の悩みや課題を知り、それを全体の戦略に反映させた後、現場にフィードバックする改善活動の一環である。日立グループはこれをグローバルに定着させることでITマネジメントレベルを向上させ、シナジーの発揮によるグループの競争力強化につなげていく意向だ。
日立グループのコンサルティング会社として、グループ全体のITマネジメントを向上させたいという共通の思いがあります。その意味で、日立製作所は顧客であるとともにパートナーです。不況の今だからこそ、COBITの考え方に基づいたIT管理項目による自己評価を行うことで、業務の有効性と効率性を達成させることが重要になっていると考えています。
株式会社 日立コンサルティング
マネージャー
上原 一浩