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株式会社 日立コンサルティング

ヒトが主体の街づくり

株式会社 日立コンサルティング コンサルタント

2012年3月19日

スマートシティとはヒトが主体

最近、スマートフォン、スマートテレビ、スマートグリッド、スマートメーター、スマートハウスなど「スマート○○」という言葉を耳にする機会が多くなりました。これら「スマート○○」という言葉には、「機械が様々な情報を基に自ら判断・機能し、最適なパフォーマンスを実現する」という意図が含まれており、これらの言葉が語られるたびに素晴らしい未来を想像する方も多いでしょう。これを街全体に当てはめた「スマートシティ」は、正に「スマート○○」の集大成、素晴らしい次世代の街、という印象を与えます。

ところが、この「スマートシティ」について色々な地域の方と実際に会話をして実感するのは、スマートシティへの期待や「ワクワク感」の低さです。昭和の時代に、国民がテレビ・洗濯機・冷蔵庫、いわゆる『三種の神器』に憧れた状況とは全く異なります。これは、「スマートシティはよく分からない。説明されても本当に今必要な街なのかどうか分からない。」といったことがその背景にあるようです。一方、今日地域住民の方々にとって必要とされているのは、新たな雇用創出、少子高齢化、医師不足、などといった構造的な課題に対する解決策です。自治体の方々からも、「スマートシティがどのように地域の課題解消に寄与するのか」といった点について多く質問を頂きます。

当然のことですが、スマートシティを構成する個々の製品やソリューションから発想するだけでは、地方の課題が解決されることはありません。太陽光パネルや風力発電所を語るのであれば、それらによって、どのように社会や生活が改善するのか、そういった説明が求められています。つまり、モノが主体ではなく、ヒトの生活ありきで議論をしなければ、スマートシティもただのハコモノの議論で終わってしまいます。

ヒトが主役の街づくりに向けた取り組み

江戸時代中期は、宝永地震のような大規模災害があった一方、農民や町民といった庶民が力強く生きた時代と言われています。庶民は、生産性を高めるため、自ら新田開発や問屋制家内工業などに力を入れ、その結果ヒト・モノの流れが活発になり、城下町・港町・宿場町・門前町・鳥居前町・鉱山町など、さまざまな性格の都市が各地に生まれました。

大震災に見舞われた現代の日本人は、これらの時代にも習い、地域自らが自立的に立ち上がることのできる強い地域社会を構築することが求められています。近代化された日本では「均衡ある発展」をスローガンに規格化された地域発展を果たしてきましたが、今日の我々はこれを見直す時期にあります。災害時には中央集権的な意思決定プロセスでは対応が困難な場合があるのと同様に、復興においても、各被災地がそれぞれの地域性を活かした復興の青写真を描き、国や県がこれを全面的に支援する体制が必要となっています。

被災地域の復興に対してスマートシティを提案する機会がありますが、自治体や地域住民の方々が求めているのは、各地域の課題を分析・構造化し、解決案を議論するための場をファシリテートすることであると感じます。課題解決の糸口が「観光振興」であれば、旅行代理店を交えて観光資源や街作りについて議論する場をファシリテートする必要がありますし、地産地消型エネルギーの「災害に強いエコタウン」が住民の求める街であれば、エネルギー関連のエキスパートを交え、共に未来の街を議論する場をファシリテートすることが必要です。自治体や地域住民の方々を中心とした街作りの発想と議論が無ければ、スマートシティはただの「かけ声」にしかなりません。

一方、幅広く市民から意見を吸い上げる仕組みづくりの必要性も痛感しています。人と人が支え合う持続可能な街は、老若男女がバランスよく住み、経済・社会・環境のそれぞれに配慮した街でなくてはなりません。特定年齢層にフォーカスした街づくりではなく、年代構成や経済・社会・環境などの観点から調和の取れた持続可能な街づくりを支援するためには、「バーチャルタウンミーティング」などのような幅広い意見を住民から取り入れるための「仕掛け」も必要になると考えています。

おわりに

大災害から1年が経った今、生活の場で人と人が支え合うことがコミュニティ即ち「街」の基本であるということが色々な場面で再認識されつつあります。「スマートシティ」が新たなハコモノや単なる掛け声に終わることのないよう、常に人や生活を中心に次世代の街作りに挑戦し続けたいと思います。

藤 顕信

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株式会社 日立コンサルティング シニアコンサルタント

“社会イノベーション”とは、一般に「社会問題を解決するための技術とビジネスモデルの変革」と解釈されます。
一方で、昨今の地球規模的な社会情勢を踏まえると、産業革命以降に構築され運用されてきた社会システムそのものが、現代社会において制度疲労を起こしているように感じざるを得ません。
そうした場合に、既に確立された社会システムに受け入れられる問題解決策だけではなく、これからの世代を支える社会システムの変革にも挑戦しなければならないのではないでしょうか。
従来の常識や価値観に捉われず、新しい社会への変革を促すためのコンサルティング―
われわれ社会イノベーションコンサルタントが日々の活動で考え・学び・感じたことをコラム形式でご紹介します。

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。