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株式会社 日立コンサルティング

社会で活躍する人財の育成について

株式会社 日立コンサルティング コンサルタント

2012年7月9日

人財に関する昨今の動き

これまでも言われ続けてきたことではあるのですが、最近になって、とみに、国の戦略として“人財の育成”が語られているように感じます。
2011年12月に閣議決定された「日本再生の基本戦略」の中では、国として取り組むべき重要政策課題に「我が国経済社会を支える人材の育成」が取り上げられ、産業構造の変化に応じた職業能力の育成、とりわけグローバル人材の育成を、産学官連携で実施していくと、述べられています。
また、2012年6月の国家戦略会議にて文部科学大臣より提示された、今後の教育改革の方向性においても、「社会で活躍する人財の育成」を大学における主要なミッションと定義し、その実現のために、大学の機能や国の財源投入のやり方等を再構築すると述べられています。

何故今頃なんでしょうか?

産業構造が変化した、企業の競争の舞台がグローバルになってきた…等々、前述の戦略の中にはその背景が述べられていますが、そんなこと、当の昔に企業側は認識しているんですよね。
現に、企業を所管する省庁である経済産業省が、民間企業の人たちと、「社会で活躍する人財」に必要なスキルとして“社会人基礎力”という言葉を定義したのは、2005年(!!)なんです。
“社会人基礎力”という言葉が定義されて7年もたった今になって、社会で活躍する人財の育成が取りざたされているのは、つまるところ、人財の育成サイド、特に社会と就職という形で接点を持つ、大学が全く変わらないことにつきると感じています。(個々の大学として、様々な取組はなされていますが、『大学“業界”』としてはほとんど変化がないように感じます)

大学と企業との人財ギャップ

経済産業省の2010年の調査で面白い内容があります。調査は2つの内容から構成されていて、ひとつ目は、企業の人事担当に、「社会で活躍するために必要な能力」を聞いたもの、二つ目は、企業の人事担当と学生双方に、「社会で活躍するために必要な能力」が今の学生(ないしは自分)に不足していると思っている人の割合です。(図-1)

図解
(図-1)

これを見て、みなさんはどう思いますか?

企業側は、知識やスキルではなく、それらを活用する力(私はこれを実践的応用力と呼んでいます。以下、そのように記載します)を求めていること、また、その能力が今の学生に不足していると感じています。これに反して、学生側は自分達の実践的応用力は十分に身についていると思っている一方、企業でそれほど必要としていない、語学力(TOEICの点数等)、業界知識、簿記等の知識やスキルに弱みがあると思っているのです。この結果ひとつをとってみても、大学と企業の間の“人財”に関するギャップは、未だ大きな開きがあるといえると思います。

人財ギャップが埋まらない主たる原因

では、なぜ、大学と企業の“人財”に関するギャップは埋まらないのでしょうか?
私はその理由を次の3つと考えています。

  1. 大学側の意識の問題
    大学は教育サービス業であるという意識が強いがゆえに、社会との接点を学生のための“就職指導/キャリア指導”としてとらえています。しかしながら、社会で活躍する人財を育成することを大学のミッションと考えるのならば、大学はむしろ(人財)製造業と認識しなければいけないはずです。大学を(人財)製造業ととらえると、顧客は社会・企業であり、顧客ニーズである実践的応用力を、大学の主たる人財育成機能である“教育(講義・ゼミ等)”にて学生に付与することが大学の存在価値になるはずです。
  2. 共通言語・共通尺度の不在
    実践的応用力については、知識やスキルと異なり、身についたかどうかを定量的・客観的に判断する尺度が存在していません。それにより、何をどこまでできれば社会が求めるレベルなのかを、大学側(大学生)がわからないという状況にあることも、ギャップを埋めることのできない理由のひとつと言えます。
  3. 実践の場が不十分
    実践的応用力は、知識の伝達やスキルの習得と異なり、座学での育成が困難な能力です。実践的応用力を身につける唯一の手段は、実践的応用力を実践することしかありません。例えば、プレゼンテーション力を身につけるためには、プレゼンテーションのやり方を教わるのでなく、どれだけプレゼンテーションの機会を持てたかが重要になるわけです。今の大学教育では、そのような実践の場が不十分であると考えます。

これら3つの原因を認識しないまま、国家戦略として大学改革を述べても、結果として企業と大学の人財に関するギャップは埋らないと思います。

社会で活躍できる人財の育成に向けて

それでは、どうすれば、「社会で活躍できる人財」を育成できるのでしょうか?

先ほどの主たる原因の裏返しになりますが、まずは大学と企業とで実践的応用力を測るメジャー(評価指標・評価軸)を整備することはどうでしょうか?
例えば、プレゼンテーションレベル1は、人から指示されれば実施する、レベル5は、聴衆に対して伝えたい内容を伝えるための自分なりの手法を持っている…等、各人の行動特性でレベルを定義することで、プレゼンテーション力を上げるために実施しなければいけないアクションが学生や大学にとっても明確になりますし、企業が必要としているレベルも明確にすることができると思います。(例えば、自社の営業職はプレゼンテーション力はレベル5以上欲しい、企画力は4以上欲しい…という感じ)

さらに、このようなメジャーを産学で共有化したうえで、各学生の実践的応用力の育成レベルを企業に公開すればどうでしょうか?また、そのレベルを判断したエビデンスとして、学生の活動履歴を共有すればどうでしょうか?(例えば、プレゼンテーションレベル5のエビデンスとして、ゼミでの発表履歴や、その際の先生の評価等)
これにより、企業が必要とする人財をサーチすることもできるようになるはずですし、逆に、学生の活動も企業に対してアピールすることができるようになります。

学生(大学)、企業双方にとってメリットのあるアクションだと思いませんか?
この仕組みは一大学、一企業で実施しても効果を得ることはできません。複数の大学、複数の企業が協力してのオープンなプラットフォームであるべきです。企業や大学は、このオープンなプラットフォーム上で、それぞれの力(それぞれの大学での教育内容、それぞれの企業の成長力・魅力等)を発揮して競争することで、社会で活躍する人財の育成やその成果の正しい評価(偏差値での大学の序列ではなく、人財育成力での大学の序列)も可能になると考えます。

このプラットフォームの実現には、行政(都道府県)の関与が欠かせません。地場の企業と地元の大学を巻き込んで、社会で活躍する人財を育成するとともに、地場の企業に優秀な人財を投入することで企業を発展させるのは、まさに地域発展を司る行政の役目だと考えます。行政も、その地域でとれた農産物など特産品を世の中にアピールするだけでなく、その地域で育った優秀な人財を、「XX県人財」のような形でアピールするのも面白くないですか?

幕末の長州や土佐のように、有能な人財を世に送り出したいと熱い思いをお持ちの行政の方々、我々と一緒に坂本竜馬や桂小五郎を育成しませんか!

社会イノベーション本部 マネージングディレクター
関 穣

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