ページの本文へ

Hitachi

株式会社 日立コンサルティング

情報システムの経験を武器に経営とITの改革に挑む 中村 誠 ディレクター(IT融担当) 情報システム部門での開発・運用の実務経験、全社横断のデータベース、ネットワーク、電子メールなどの導入、会社全体の情報システム基盤設計経験を通じたITに関するコンサルティングが得意分野。→現在、マイコミジャーナルへ連載中 / ピーター・バラカン氏(ブロードキャスター)

エンジニアからコンサルタントへ

バラカン
中村さんのキャリアは日立製作所から始まっていますが、生粋のエンジニアだったのでしょうか。
中村
大学は経済学部の出身ですが、元々はエンジニアではありません。たまたま、ソフトウエア工場の経理部に配属され、そこで情報システムと出会うわけです。当時は「IT」なんて言葉もない時代です。あのころは「MIS(マネジメント・インフォメーション・システム)」といって、事務管理のシステムの総称。今では、呼び方を知っている人も少ないのではないでしょうか。
バラカン
ずっと情報システムの分野で実績を積み重ねてきた中村さんが、どうしてコンサルティングの道を選択されたのか。そこが気になります。
中村
コンサルティングは、いろいろな進め方や段取りがあり、興味を惹かれました。情報システムは特殊な世界で、考え方・進め方の手順がほぼ決まっています。始めに企画があり、その先は要件の定義、基本設計、システム設計、開発、テスト、運用と、次に何をやればいいかが見えるし、日本だけでなく、世界中のエンジニアが同じ発想を持っているんですね。一方、実際のビジネスシーンで求められるのは、どんなゴールを設定するかはもちろん、そこに至る過程を論理的に構築しなければ、賛同を得られません。こういうことが、コンサルティングの難しさであり、面白さでもあると思います。
バラカン
音楽のプロデュースも同じです。基本的な進め方はあるけれど、具体的な方法論はそれぞれのプロデューサー、アーティストによって違う。数多くのアイデア、引き出しを持っていなければ、聴く人を納得する音楽は生まれません。
中村

中村誠

情報システムの現場で20年、自分なりにキャリアを積んできたつもりでした。でも、リアルなビジネスシーンに置き換えると、自分はなんて無力なんだろう、と。そこで考えました。経営層が意思決定するとき、ITは欠かせないピースになっているのに、多くの人はITに対して「難しい」「コストがかかる」と構えてしまう。私の経験があれば、ITをベースにして、経営目標達成のための道筋を明確にする、コンサルティングができるんじゃないか。そこには、自分自身に対する挑戦という意味もありました。

バラカン
今は主にどんな分野を担当されているのでしょう。
中村
ITガバナンス、情報基盤策定、運用管理、事業企画集中検討など、ITに関するコンサルティング全般です。ITを経営に結びつけ、有効かつ効率良く使えるよう、マネジメント面から組織面にまで踏み込んで、お客さまを支援しています。

どう合意形成を進めるかが勝負

バラカン
私が来日した1970年代は、海外との通信手段にテレックスを使っていました。日本では、ファックスが普及しましたが、80年代半ばには電子メールが登場する。メールを使うと、最初は、未来をのぞき込んだような気もしましたね。
中村
日本人は両手で文字を打つタイプライターに慣れていなかったから、テレックスで無くファックスが普及したのだと思います。ところで、バラカンさんはオートバイの「トライアル」という競技をご存知ですか。
バラカン
聞いたことはありますが、見たことはないですね。
中村
山を踏破する競技なんですが、ゴールまでの間にいくつもの段差があって、それを越えないと先へ進めない。人間の背丈以上もある段差ですから容易には越えられないし、ライダーは何度も、何度も挑戦を繰り返します。しばらくトライ&エラーが続き、やがて一人のライダーがひょいっと段差を越える。すると、ほかのライダーも今までが嘘のように次々に越えていくんですね。どんなに無理だと思える段差にも、必ずひとつはルートが残されているし、いったん超えると当たり前のことになってしまう。ITの世界では、先ほどお話に出た電子メールをはじめ、こうしたブレイクスルーがあります。
バラカン
面白い話ですね、それは。難しい、誰も分からないと思えることでも、誰かが突破口を開けば皆、分かるようになる。コンサルタントの仕事にも、こうした感覚はあるような気がします。
中村

その通りです。コンサルタントの重要な仕事は合意形成をスムーズに進めること。どんなに高尚な話をしても、お客さまに理解していただけなければ意味がありません。一人が理解しても、携わるすべての人が分からなければ、次のステップで改善できなくなってしまいます。誰もが乗り越えられるラインを見つけ、提示することが重要で、そういう意味ではオートバイのトライアルと似た感覚かもしれません。

一歩引いて、全体を見渡せるか

バラカン
今まで数多くのプロジェクトにかかわってきたと思いますが、相手は業種も考えも違うわけだから、合意形成といっても一筋縄ではいかないはずです。経営者の中には個性的な人も多いと思います。たたき上げの人なら、自分のやり方に絶対の自信を持っていて、なかなか耳を傾けないケースも多いのでは。
中村
優れた経営者ほど、思いついたことをパッ、パッと口にします。回りには思いつきとしか感じられなくても、経営者の頭の中にはとてもロジカルな思考があるんですね。それを引き出すのもコンサルタントの仕事です。例えば、お話をするときは必ず複数で、言葉や仕草を細かくメモしていく。要約せずに言葉をそのまま拾い、「ここでうなずいた」とか、仕草も書き込んでいきます。それを後で論理的に整理すると、考えていることが明確に分かり、潜在的なニーズも抽出されるのです。
バラカン
では最後に、中村さんがこれから、どんなコンサルタントとして仕事に向き合っていきたいか。考えをお聞かせください。
中村

私は地図を見るのが好きなんですが、行ったことのない場所を探して迷ったときは、ズームアウトして全体を見渡した中での位置関係に戻った方がいい。仕事も同じで、一点に集中して悩んでいると、どんどん思考はミクロの方向に向かい、全体が見えなくなる。常に一歩引いて、全体を見渡すのがコンサルタントの視点であるべきだし、そういう視点から、ITをベースにした効果的な提案を行っていきたいと思っています。

ピーター・バラカンの写真

ピーター・バラカン

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学を卒業後、1974年に来日。
「CBSドキュメント」(TBS)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK・FM)など幅広く音楽を紹介している。
著書に『ぼくが愛するロック名盤240』(講談社プラスアルファ文庫)などがある。

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。