2020年3月6日
株式会社日立コンサルティングは、京都大学こころの未来研究センターの広井教授と「日立京大ラボ」とともに、「AIを用いた根拠に基づく政策立案(EBPM)」の共同研究に参画しています。
本書では、AIを政策立案に活用する基本的な考え方の解説から、EBPMの必要性とこれまでの取組み、そして自治体等への具体的な活用例を紹介し、今後の活用可能性についても展望しています。ぜひ、ご高覧ください。
データ×人の“想い”
AIが導き出す、未来へのヒント
我が国では、人口減少・少子高齢化・東京圏への人口の一極集中といった様々な課題を受け、2014年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定され、地方自治体も地方版総合戦略の策定が求められた。その結果、各地方自治体は、2015年度から2020年度までの5年間のKPIを設定し、自団体の目標達成に向けた取組を実施している。
2015年度から2020年度までを第1期総合戦略とすると、2021年度以降は第2期総合戦略が開始されることになり、第1期総合戦略の進捗状況や取組の結果について必要な調査・分析を行った上で、第2期総合戦略を策定する必要がある状況である。
また、近年では「根拠に基づく政策立案(EBPM)」の考え方の必要性が叫ばれており、地方創生の現場においても、客観的な分析結果を基にした戦略策定が求められている。
そのような状況の下、本書では「日立京大ラボ」のAIを活用し、地方自治体の実績データの分析や未来シナリオのシミュレーションを行うことで、EBPMの考え方を基にした第2期総合戦略策定の方向性を示唆している。
「AIを未来社会の構想や政策立案、あるいは企業の戦略策定等に活用することは可能なのだろうか?」――こうした問題意識を出発点に、人口減少や経済成長の鈍化など、先の見えない現在の日本の状況において、AIを活用して未来を構想する新たな方法を探ってきたのが私たちの試みです。
それはなお未開拓の領域ですが、AIを活用した分析は、①無数の未来を網羅的に列挙することを通じ、現状や未来についての人間の「認知バイアス」を是正し、②多くの要因間の「複雑」な関係性や影響構造を分析でき、③「不確実性」や「あいまいさ」を組み入れた予測をなしうる、といった長所をもっています。同時にそれは、「フォアキャスティング(未来予測)」と「バックキャスティング(未来逆算)」を複合化した、いわば“フォア・バック・キャスティング”――と呼びうる新たな方法とも言えます。
AIを活用した政策立案についての基本的な考え方や技術面での解説、さらにそれを実際に活用した自治体等の具体的事例などを包括的に盛り込んだ本書の内容が、多くの方々に共有され、社会の持続可能性を高めるべくさらに進化していくことを期待しています。
千葉大学教授を経て2016年より現職。専攻は公共政策及び科学哲学。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大沸次郎論壇賞受賞。他の著書に『ポスト資本主義』、『人口減少社会のデザイン』など多数。
間接材購買コンサル企業にて、地方の宿泊施設や小売店等のコスト改善業務を経験し、2016年より現職。現在は、自治体関連の調査研究や日立京大ラボ等の共同研究を通じて、Society 5.0実現に向けた検討・実証等の活動に幅広く参画。慶應義塾大学小川克彦教授と共著で『地方創生は日本を救うか〜KPIランキングで読み解く日本の未来〜』(NTT出版、2017年)を上梓。
専門は複雑系科学、人工知能(AI)。2005年東京大学大学院博士課程修了(博士(科学))。日立製作所中央研究所に入所後、AIの研究に携わり、2016年6月より京大─日立の産学連携拠点である日立京大ラボにおいて、超スマート社会(Society 5.0)の実現に向けた政策提言AI及び自律分散システムの研究に従事。
金融機関にて地方企業の経営改善業務に従事後、早稲田大学大学院政治学研究科専門職学位課程修了(修士(公共経営))。大学院で公共政策(地方自治体の政策策定等)について学び、2018年より現職。現在は、最新技術動向や政策動向を踏まえた新規事業検討や国の調査研究などに参画。