イベントレポート at TECH PLAY SHIBUYA
日立コンサルティングが実例で紹介。
デジタルトランスフォーメーションに向けた
学校法人が取り組むワークスタイル変革とは?
2019年4月の「働き方改革関連法案」の施行に伴い、日本のあらゆる企業が従業員のワークスタイル変革に取り組もうとしている。
日立コンサルティングでは、11月11日にイベント「日立コンサルティングが実例で紹介。デジタルトランスフォーメーションに向けた学校法人が取り組むワークスタイル変革とは?」を開催した。
会場は、IT関連の勉強会やセミナーが多く開催される「TECHPLAY SHIBUYA」。当日は人事や事業企画系の従事者のほか、WEBプロデューサー、エンジニア、コンサルタントなど、職種に関わらず多彩な顔ぶれの参加者が集まった。
SPEAKERS
デジタル技術を活用した経営・業務改革、ベンチャーや研究所などの外部と連携したサービス開発に従事。近年は働き方改革や健康経営にも注力。
現在、働き方改革に向けたペーパーレス化や、デジタル化およびRPAを活用した自動化による業務改革、文書管理などに関するコンサルティング業務に従事
現在、働き方改革に向けたデジタル化およびRPAを活用した自動化による業務改革、IT構想策定などに関するコンサルティング業務に従事している。
ワークスタイル変革に
デジタルイノベーションを活用
最初に西岡が登壇し、本日のイベントの概要を説明した。
「日立コンサルティングでは、公共や金融関係などの分野で日立グループで得た強みを活かしたサービスを行っていますが、業種・業界によらず今注目を集めるAIやデジタル活用、イノベーションに関するサービスも得意としています」
「働き方改革関連法案が施行されたことで、業務効率を向上させるためにデジタル技術をどう活用するのかについて、企業や教育機関などの関心が高まっています。そうした世の中の動向を踏まえ、本セミナーのテーマを”ワークスタイル変革とデジタルトランスフォーメーション”に設定しました」
具体的な取り組み事例として、桜美林大学による”ワークスタイル改革”が紹介された。これは2017年に始まり、3つのフェーズに分けて2022年ごろまで継続する予定の、日立コンサルティングが長期的に取り組むプロジェクトのひとつだ。
デジタル・イノベーションコンサルティング事業部
デジタルイノベーションコンサルティング本部デジタル・イノベーションコンサルティング事業部
デジタルイノベーションコンサルティング本部国内の多くの大学が直面する危機的状況を
打破するための都心回帰が始まっている
続いて登壇したのは、桜美林大学のワークスタイル変革を実際に担当している篠塚だ。
「国内の多くの大学では”少子化による学生不足”と”学生不足からくる資金不足”そして”教職員不足”という3種の不足により、経営において非常に厳しい負のスパイラルが起こっています。さらに文部科学省による私立大学の定員厳格化により学生数の上限が制限され、学納金は頭打ちになっているという事情もあります。様々な業種・業態の中でも、大学は1、2を争うほど困難な経営を強いられています」と話すように、一部の人気大学を除いたほとんどの大学が、同様にひっ迫した状態なのだという。そこで各大学は人気回復策のひとつとして、キャンパスの都心回帰の傾向を強めている。
桜美林大学はユニークなカリキュラムとグローバルな人材育成が特長で、アメリカ・イギリス・中国など34か国・地域、170を超える海外の大学・機構と提携しており、グローバル社会に豊かな教養をもって柔軟に適応できる国際的人材を育成するビジョンを設定している。
メインキャンパスは東京都町田市に所在しているが、2019年にはビジネス・経営の実践的教育を強化した新しいキャンパスを新宿にオープンした。また、2020年4月には、大学の特色を打ち出すため、芸術文化を学ぶ場として東京ひなたやまキャンパスを開校予定だ。
しかしこのような多キャンパス化は、事務拠点が分散し、会議時などの移動をはじめさまざまな場面で大学職員の負担を確実に増やすことに繋がるため、ワークスタイル変革に取り組み始めた。
ワークスタイル改革の第一歩はペーパーレス化
現状を可視化して取組みを促進
桜美林大学が改革に着手したのは2017年、第1フェーズ”ワークスタイル改革1.0”からスタートした。ここで日立コンサルティングが最初の課題として提案したのが”ペーパーレス化によるコミュニケーション基盤の見直し”である。
ペーパーレス化は一般的に抵抗感を持たれることが多いが、桜美林大学では「現状の文書量を可視化することで、重要性を認識し、積極的に取り組んでいただきました」(青山)ことで、スムーズに進んだ。
結果的に「ペーパーレス化によって、文書保管のためのスペースを削減。空いたスペースを有効活用して、教職員のミーティングや作業スペース、学生に応対するスペースを拡大して、コミュニケーションの活性化や学生へのサービス向上を実現しました。さらには、リモートでのペーパーレス会議や、稟議・意思決定における承認プロセスの電子化など、働き方が大幅に変わり、多キャンパス化による物理的な場所の制約を意識しないで済むようになりました」。
さらに、将来的にはテレワークやRPAの導入による業務効率化につながるとも話し、成果を強調した。
導入により窓口にくる人が半減
注目を集めるチャットボット
桜美林大学では現在、第2フェーズ”ワークスタイル改革2.0”に取り組んでいる。テーマは「業務内容と業務量の実態を調査して可視化し、無駄な事務の削減・共通化・自動化を行い、情報基盤を整理することで生産性の向上をめざす」というもの。
これについて篠塚は、「例えば受験生・在校生・保護者・教職員などからの問い合わせ対応や申請への対応業務のために、多くの時間を使っていましたが、問い合わせなどの学生対応自体は大学への信頼を維持するために欠かせないサービスであり、簡単に削減することはできない、という悩みを抱えていました」と語る。
これを見直すために、桜美林大学ではチャットボットの導入を検討している。「問い合わせをAIが解析し、チャットボットが自動で回答します。申請も電子化して、学生はわざわざ窓口に行かなくても、スマホで手続きが完結するようになります。それにより職員数の削減も可能ですが、さらに重要なのは、大学側として本当に親身になって対応しなければいけない学生の相談に時間が割けるようになることです」(篠塚)。ちなみにチャットボットに関しては、セミナー後の懇親会で最も問い合わせが多く、一般的な関心の高さをうかがわせた。
時短を進めればいい、というものではない
何のためのワークスタイル変革なのか
桜美林大学では今後、2021年度からの第3フェーズ”ワークスタイル改革3.0”に入っていく予定だ。そのことを踏まえた上で、青山は社会全般の”ワークスタイル変革”の動きについて次のような話をした。
「ある企業では『ワークスタイル変革=時短』と考え、時間になると照明やパソコンの電源を落とすなどの策により就業時間の制限を始めました、しかし、根本的な業務量を減らさなかったことや、効率化のための施策もなかったため、従業員は目先の業務だけを行うようになったのです。このような現象はあちこちで起こっていて、長期的な視点に基づく業務が後回しにされたという悩みをよく耳にします」
ワークスタイル変革とは、「本来は単なる時間短縮ではなく、効率化によって業務を削減し、その結果余った時間をより有効に使うことです」と篠塚は話す。「これにより企業が、働きやすさだけではなく働きがいを高めていくことが重要です」という言葉で、今回のセミナーを締めくくった。
ライター:山田智美
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