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DX成功のポイント プロトタイプ・MVP活用で“決める”

荒浪 篤史 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

岩ア しのぶ 株式会社 日立コンサルティング マネージャー

土生 早希子 株式会社 日立コンサルティング マネージャー

山本 雄太 株式会社 日立コンサルティング シニアコンサルタント

2023年4月3日

「プロトタイプ」と「MVP」(Minimum Viable Product)活用がDX成功のポイント
〜日立コンサルティングが提供する“決める”チカラとは〜

総務省の調査結果(2021年3月)をはじめとした各機関によると、日本のDX(デジタルトランスフォ―メ―ション)の成功率は約10%という驚くべき調査結果があります。
多くの企業は、デジタル技術やデータを活用しなければ、激化する競争に勝ち残っていけないと感じているのではないでしょうか。しかし、DXの推進によって新しい事業やサービスの構築が加速した企業がある一方で、成功に至っていないケースも確認されています。DXに乗り出したとして、結果的に競争優位に立てるか否かは不透明なのです。
だからといって、「DXに取り組まない」と決断する企業は、まず無いのではないでしょうか。競争に勝ち残るためには、いち早くDXに取り組み、早い段階で失敗することも成功に向けた戦術なのです。そこで重要となるのは、早く的確な判断を、いかに要所要所で下してDXを推進していくことができるかだと、私たちは考えています。
本コラムでは、日立コンサルティングがこれまでお客さまと共に取り組んできたDX構想策定コンサルティングの経験に基づき、DX成功に向けたポイントである早く的確な判断を下すためのアプローチとなる「プロトタイプ」や「MVP(Minimum Viable Product)」の活用について紹介していきます。

DXを成功へ導くには「早く、正しく、美しく?」決める組織の力が重要

「わが社のDXを成功させよ」と命を受けたDX担当者は、次のような課題を抱えているのではないでしょうか。

1.
決めるのに時間を要してしまう
2.
正しく理解せず選択をしてしまう
3.
全員が納得していない

DX成功のためには、まず「やるか、やらないか」を決めて、競合他社に先行しなければなりません。もし「やらない」という選択をするならば、そのリソースをほかに振る判断も早いに越したことはありません。しかし実際は、この判断ができずに、無駄な時間を要してしまうのです。
また、全員が正しく状況を理解せず決定を下してしまうと、反省点の洗い出しが中途半端になってしまいます。その結果、次への糧が得られず、同じ失敗を繰り返してしまう可能性もあります。
こうした課題を克服するためには、「早く、正しく、美しく?」決めることができる組織の力がDXにおいては必要です。そして、DX担当者には「決めるための工夫」が求められています。

早く正しく決める重要性のイメージ図

「決められない」DX推進の課題は「認識の温度差」

ではなぜ、「早く、正しく、美しく?」決められないのかを考えてみましょう。

例えば、営業担当者の行動履歴と販売実績をリアルタイムに表示する営業ダッシュボードの静止画を作ったとしましょう。これがおしゃれな見た目のグラフやデザインだと、画面が動かないため、レビュアーは一見した印象からビジュアルに目線が集中してしまいます。そうすると「あのデータが見たい」、「ここはプルダウンがいい」という本来必要であった機能についての議論から離れてしまい、ここで認識ギャップが発生してしまうのです。これにより、客先を飛び回っている営業担当者が、「いつどうやってデータを入力するのか?」といったプロセス上の課題を見落としてしまう危険性があります。このようなケースでは、レビュアーに営業の実体験が無いことに加え、静的コンテンツのみでは、仮想体験への変換が不十分となり、本来議論し推進するべきプロセスを見いだせなくなります。

DX推進では、検討に参加する多くの人にとって「体験したことの無いプロセスやシステム」への変換が必要になります。そのため、決定権がある幹部と、利用者となるユーザーが、DXの効果や課題について異なる解釈をしていたり、完成物とその操作性に対するイメージを全員で共有できていなかったりする可能性があります。また、認知特性のうち、視覚、言語、聴覚の何が優位なのかが、人によって異なるといったことも、イメージの不統一の原因となっているといえます。

人によって同一現物から得られる情報や感覚が違うのイメージ図

日立コンサルティングが取り組んできた「DX構想策定コンサルティング」を振り返ると、DXのアイデアをホワイトボードやパワーポイントに書き、協議し、プレゼンテーションを重ねてきました。しかし、意思決定者や利用者などの聞き手は、言語情報や視覚・聴覚情報に基づき、各々が自分の仮想体験へイメージを変換しながら理解しています。そのため、各個人が想像するプロセスや画面の形や色、粒度は人によって異なることがあるのです。
その結果として、組織の中で「認識の温度差」が生じてしまいます。

「認識の温度差」を打破する日立コンサルティングの提案

「認識の温度差」を打破する方法をわれわれは提案します。それが、「プロトタイプ」や「MVP」活用です。

営業ダッシュボードを例に考えると、データ入力から出力画面のプロトタイプをレビュアーに操作させることによって、レビュアー全員が同じ完成物をイメージし、的確な判断ができるようになります。それに加えて、当初の構想が営業担当者の行動パターンとミスマッチであることに気付くといった、実現性における課題検出にも効果を発揮します。

イメージ図

プロトタイプとは、DXの動く実現イメージであり、Webページやスマホアプリの試作品です。プロトタイプは、簡易なツールでスピーディーに開発されて、ダミーデータを用いてレビューされます。MVPは、プロトタイプを更に進化させ、機能を絞りつつも、本番を想定したツールや環境で開発することで、実際のユーザーによる検証を可能としたものです。

プロトタイプによる課題解決のイメージ図

「プロトタイプ」や「MVP」を活用すると、「動く画面」を見てみたり、「実際に操作」してみたりすることによって、これまでは聞き手や読み手が独自に脳内で補完していた情報を、全員の共通認識として一気に浸透させることができます。その結果、「認識の温度差」が少なくなることによって、「早く、正しく、美しく?」判断ができるのです。

「プロトタイプ」と「MVP」(Minimum Viable Product)活用の期待と効果

「プロトタイプ」や「MVP」の活用は、DX担当者にも大きなメリットをもたらします。動くプロトタイプやMVPは、それに触れたユーザーのリアクションも観察できます。「楽しそう」や「困っていそう」などのリアクションの観察で、言語化されないユーザーの本音をかいま見られます。もちろん、紙やスライドのような静的コンテンツでもユーザーからのフィードバックを得ることは可能です。しかし、使いやすさなどを言葉で上手に表現できるユーザーは限られています。また、静的コンテンツでの伝え方が不十分になると、一部の意見のみが反映された完成物となってしまう危険性もあります。それに対して、プロトタイプやMVPであれば、言葉では表現できなくても、どこでちゅうちょしているのか、どこで離脱するのか、といった行動を視認できます。また、操作ログからも振り返ることが可能となり、潜在化しがちな課題の発見と潰し込みが可能になります。

日立コンサルティングが貢献できるDX成功へのチャレンジ

最後に、日立コンサルティングのコンサルタントが、「プロトタイプ」や「MVP」の活用に参画することで、お客さまにお届けできるメリットを説明します。

お客さまを知り尽くしたデザイン
構想策定に参画し、お客さまの内部環境や外部環境、戦略を熟知したコンサルタント故に適切なプロセスや入力画面がデザインできる
スピーディーなプロトタイプ開発
第三者への知識移転や調達プロセスが不要になる
構想の更なるブラッシュアップ
プロトタイプやMVPで得たアイデアや課題を速やかに構想にフィードバックできる

冒頭で述べたようにDX推進をしなければ、激化する競争に勝ち残っていくことは難しいでしょう。お客さまのDX成功率を更に高めるために、日立コンサルティングが“決める”チカラをご提供しますので、勇気をもってDXにチャレンジしていただければ幸いです。

イメージ図

本コラム執筆コンサルタント

荒浪 篤史 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

岩ア しのぶ 株式会社 日立コンサルティング マネージャー

土生 早希子 株式会社 日立コンサルティング マネージャー

山本 雄太 株式会社 日立コンサルティング シニアコンサルタント

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。

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