日立コンサルティングで私が抱く想いを具現化できた訳
異業種からの転職、前職の経験を活かしてコンサルタントとして活躍する女性社員が、その「想い」を具現化した体験から、日立コンサルティングの社風や環境、制度を紐解く。
多様性を体験できるゲームを発案した、日立コンサルティングの山本美海さん。「温めてきた思いが少しずつ具現化できてきてうれしいし、楽しい」と目を輝かせる。ゲームの詳細、そして同ファームに転職した経緯やここで働くことの魅力を聞いた。

アンコンシャス・バイアスの気付きを与える体験ゲームを発案
――山本さんが発案したのはどのようなゲームか教えてください。
現在の自分と違う属性、例えば、ジェンダーや性自認であるとか、性的指向であるとかを持っている人が、日々の生活で見ている・過ごしている世界を体験することで、新たな視点やアンコンシャス・バイアスの気付きを得られる体感型のゲームです。ファシリテーター含め4~6人のグループで実施します。オンラインか対面かで少し手順は異なりますが、どちらの場合もゲームが始まるとまず「イベントカード」がランダムに選ばれます。
イベントカードには、日常の中でありうるシチュエーションが書かれています。例えば、「オフィスでトイレへ行こうとしたら、同時に同僚もトイレへ行こうと席を立った」のような、ありふれた場面です。その下には、この場面でとると考えられる行動の選択肢が書いてあります。
参加者全員で読んだら、次は「プロフィールカード」がランダムに選ばれます。そこには、自分と異なる誰かの属性、例えば、「私は女性」、「生まれの性は男性」といったプロフィールが書いてあります。この人が、先ほどの「イベントカード」に書いてある場面に直面したら、どうすると思いますか? それはなぜでしょうか?……と、ファシリテーターが質問して考えを掘り下げていきます。
1枚の「イベントカード」には当事者以外にも登場人物が設定されているので、「プロフィールカード」の「この人」以外にも「上司」や「同僚」などの役を参加者内で決め、それぞれの意見を引き出します。
――なるほど、この段階ですでに気付きがありそうですね。
そうなんです。その気付きこそが、アンコンシャス・バイアスの存在に気付く瞬間であり、このゲームの狙いです。例えば、プロフィールカードの人物が性的マイノリティであった場合、周りにカミングアウトしているかどうかでも、行動は変わります。カミングアウトしていない人なら、その点を伝えるところから始めるかもしれませんし、カミングアウトを避けるために意に添わぬ行動を選ぶかもしれません。私は、DEIがどれだけ実現されているかは、選択肢に現れてくると考えています。誰にでも平等に選択肢があり、他人ではなく自らの意思に従って自由に選ぶことができるということは、当たり前のようで、意外とそうではないと思います。このゲームを、自分だったらどうするか、その場にいたら何ができそうか、周りの人はどう受け止めるのか、じっくり想像しながら考えるきっかけにしてほしいです。

“女性に優しい”ではなく、男女等を問わず“みんなに優しい”

――先ほどのゲーム開発を始めたきっかけ、経緯は?
21年度にヘルスケアに関する新規企画を考えるグループ活動に参加しました。リーダーを務める上司が「このグループは女性が多いから、ぜひ女性ならではの視点で、女性に優しいサービスなどのアイデアを出してほしい」と言いました。この言葉を聞き流してもよかったのですが、学生として就職活動をしていた頃からその時まで抱えていたもやもやが頭の中をめぐりました。“女性に優しい”の女性って誰のこと? 女性にも色々な人がいるし、そもそも“女性に優しい”とされていることって本当に女性だけにしか関係のないこと? 新しいサービスを生み出すことは、新しい社会をつくること。そのためには固定概念を振り払っていきたい、という気持ちから勇気を出して発言したのです。
「“女性に優しい”ではなく、男女等を問わず“みんなに優しい”の視点が大事だと思います」
――上司に想いをぶつけてみたんですね! 反応はいかがでしたか?
意外にも上司は「なるほど。そういう発想はなかったな」と言ってくれました。その時に日立コンサルティングには想いを素直にぶつけられる企業風土があるなと思いました。そして女性メンバーからも「そんなこと、考えたことがなかった」というリアクションがあり、当事者である女性にもアンコンシャス・バイアスがあるのだと気付きました。
そこで、こういったアンコンシャス・バイアスが自分にもあるということに自分で気付くことができるようになるための方法を確立してみたいという想いを伝えたのです。このゲームのアイデアを出したところ、上司含めメンバーからは「面白い。やってみよう」というゴーサインが出ました。
互いに応援し、協力し合う風土で想いを実現
――いろいろな立場を疑似体験できるという発想も、細かい場面や人物設定も、斬新でリアリティがありますね。ヒントや参考にしたものはありますか?
公開されている実態調査の情報等を参考にしましたが、ゲーム自体は私が一から作りました。以前から疑似体験というアイデアは持っていました。人間は経験していないことには想像が及びづらいので、自分と違う属性の人について理解しようと思っても、周りにそういう人がいないと実際にはかなり難しいと思います。かといって、現実にすべての多様な人と出会うのは難しい。それなら、疑似体験することでその感覚を体感でき、気付きを与えることができるのでは?と考えました。いきなりディスカッションで自分の考えを聞き出そうとされると身構えてしまいますが、役を通してカジュアルに体験できるゲームなので抵抗感を感じにくいという声もよくいただきます。カードゲームとして対面でもできるし、オンラインでも実施できます。
――なるほど、著作権も山本さんや御社にあるオリジナルゲームなのですね。社内やグループ企業内でゲームを体験してもらったそうですが、他にどんな意見がありましたか。
試作段階で体験協力者を社内で募集すると一気に16人が参加表明してくれて、オンラインで体験してもらいました。「意識が変わった」「面白い」という意見も多かったのですが、重要なフィードバックもありました。それを受けて「Xジェンダー」など、やや読み込みが難しい立場や設定は中級や上級に振り分けるなど、いくつかの点を改良し、現在の形になりました。また、参加者のひとりが日立製作所のグローバル ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン本部に「こんなゲームを作った人がいる」とつないでくれて、日立製作所内で体験会を実施できました。
――本業務をきちんとこなした上で、ですが、本当にやりたいことができる社風ですね。
はい。本業務に少し余裕のできた22年1~3月で一気に仕上げました。社内体験会も、募集をかけるとすぐに枠が埋まり、参加者には管理職もいて、皆さん仕事が忙しいのに「面白そう」「協力したい」と言ってくれました。役員も含めてさまざまなレイヤーの方が「やってみるといい」「応援するよ」と声を掛けてくれて、この会社には応援し合う風土が根付いているのだなと思いました。
英国の大学生活で個人を尊重する文化を体感

――確かにトランスジェンダーといった言葉だけ知っても、実際には分かっていないことも多い。ゲーム形式だと、自分ごととして考えられますね。このユニークな方法や多様性に目を向け始めたのは、いつからですか?
英国で過ごした大学時代です。中学時代の恩師の影響で留学に憧れがあり、英国のニューカッスル大学へ進学しました。そこでは、多種多様な人種・文化・常識・習慣などが当たり前に存在していて、違うもの同士互いにリスペクトがあり、属性ではなく個人を見てくれる環境の居心地のよさに感動しました。多様性が受け入れられることの価値を実感すると同時に、日本ではこの点にまだ課題があると強く感じるようになりました。そのような部分も含めて、自分の経験を活かして何か日本に貢献したいという気持ちが高まり、帰国して就職しました。
新卒で入社したのは通信キャリアの会社です。社会環境を整える仕事をしたい、より住みやすい世の中にしたいという思いでインフラ系の大手企業を選びました。
――その会社で働く中で、何か気付きがあったのでしょうか?
東日本大震災の翌年に入社し、最初に担当したのが防災系システムでした。台風による水害などで被災した方が1日も早く生活を再建できるようにお手伝いするもので、実際に活用される場面を目にしてやりがいを感じました。そのとき、改めて「誰かの命や生活、心の安全性が守られる仕事を続けたい」と思いました。
――仕事に醍醐味を感じていたのに、なぜ転職されたのですか?
その仕事はとても楽しかったのですが、やがて全く毛色の違う部署に異動になり、その後もまた数年おきに異動で仕事の内容が変わってしまうこともわかっていまして、やりたい仕事を選べないことにもどかしさを感じました。最初に担当した防災系システムにはSEとして関わりましたが、人員の都合で事業企画的な立場でも関われる機会があったことで面白さに気付き、業界をコンサルティングファームに絞って次の職場を探しました。
――転職先として日立コンサルティングを選んだ理由を教えてください。
日立コンサルティングの企業理念の中に「社会課題解決」が盛り込まれていたことと、公共関連のコンサルティングサービスを行っていたからです。経験を活かした提案ができそうだと思い、決めました。採用面接で「どういう仕事をしたいか」と聞かれて「社会貢献の実感が得られる仕事に関わりたい」と答えました。そのような質問をされること自体、キャリアや仕事を選べる会社だ、という期待も感じました。
――入社後はどんな仕事を担当しているのでしょうか。
新サービスの立ち上げ支援など、事業企画系のプロジェクトを担当することが多いですが、現在は少し種類の違うものにチャレンジしています。建設業のデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトで、業務改革の仕事です。コンサルティング業務ではマネージャーとして、現状の分析や整理、業務最適化やシステム化構想の策定、サービスの要件定義から基本設計、プロジェクト管理など多岐にわたります。
「これまでの経験」×「コンサルティングスキル」=自分の強みを磨く
――他業種からのキャリアチェンジですが、コンサルティング業務に関してはいかがですか。
前職で培った業界の経験を含めたこれまでの経験と新たに習得したコンサルティングのスキルの掛け合わせで、自分の強みに磨きがかかったと感じています。コンサルティング業界未経験ということは、これまで自分が携わってきた別の業界や分野でコンサルタントとしては得られがたい経験があるということです。だからこそ、広く深く業務に取り組むことができるのだと思います。
実際、当社では様々な業界から転職してきた方も多く、各業界に精通した知識を得られることも大きな魅力です。直近担当している建設業の業務支援では、建設業界出身のメンバーからヒントを得ることもあります。実務を経験しているからこそのリアルな話を聞けたり、キーパーソンを紹介してもらえたりするので、解像度がぐっと上がり、インスピレーションが湧きやすいです。
――コンサルティングスキルを習得することに不安を抱きませんでしたか。
新しい仕事や環境が楽しみな気持ちのほうが大きかったですが、自分がすぐに必要なスキルを身に着けて即戦力になれるのかという不安も少しありました。しかし当社には研修なども多く用意されていて、未経験者を受け入れる体制がしっかりしていたので、そこは実際には心配いりませんでした。また実務でも、上司・同僚との距離感が近く、お客さまとの会話や資料の作り方、立ち振る舞いなどを直接見て、コンサルタントとしての仕事の進め方を習得することができます。OFF-JTとOJTのバランスの良さで、安心してコンサルティングスキルを身に着けられる環境だと、周りを見ていても思います。

――最後に、日立コンサルティングでのキャリアの展望を教えてください。
どんなに大きなプロジェクトに携わる場合でも、クライアントの顔が見える距離での仕事をしていきたいです。クライアント一人ひとりに向き合い、お話を伺いながら、想いに寄り添った支援ができたときに充実感を得ています。信頼関係を築き、何かお困りごとがあった時にはすぐに声をかけてもらえる、「山本さんだから任せたい」と指名されるようなコンサルタントをめざしていきたいです。

取材・文/加納美紀 撮影/洞澤佐智子 構成/太田留奈