ページの本文へ

Society 5.0の実現に向けた政府戦略「未来投資戦略2017」
(後編)横割課題への対応

田中 総一郎株式会社 日立コンサルティング コンサルタント

2018年5月14日

1. はじめに

前回は、Society 5.0の実現に向けた政府の成長戦略「未来投資戦略2017」の位置づけや全体像を示しました。また、以下4つの施策カテゴリーのうち「Society 5.0に向けた戦略分野」について紹介しました。

Society 5.0に向けた戦略分野
Society 5.0に向けた横割課題
地域経済好循環システムの構築
海外の成長市場の取り込み

本稿では、2つ目「Society 5.0に向けた横割課題」について、その構成を示したうえで、具体的な施策を抜粋して解説します。

2. 「Society 5.0に向けた横割課題」のポイント

「Society 5.0に向けた横割課題」では、Society 5.0の実現にあたり、前回のコラムで紹介した戦略分野の共通基盤を強化するために取り組むべき施策が図表 1のような構成でまとめられています。

図表 1.Society 5.0に向けた横割課題の構成のイメージ

*1)
PPP(Public Private Partnership):公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームのこと
PFI(Private Finance Initiative):公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金や経営能力、技術能力を活用して行う手法のこと。国や地方公共団体よりも効率的かつ効果的に実施することで、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を可能にする。

図表 1.Society 5.0に向けた横割課題の構成

Society 5.0の実現には、AIやIoT、ロボット等の革新的技術の利活用が肝であり、そのためには、十分な量・質のデータを有効に利活用するための環境が必要です。そこで、「A. 価値の源泉の創出」の中でも、データの利活用環境を整備する施策がまとめられている「データ利活用基盤の構築」について紹介します。
また、Society 5.0の実現には、革新技術を社会に適用していくことが求められますが、既存の規制によって阻まれてしまうことがあるため、規制改革の可否も検証していく必要があります。そこで、「B. 価値の最大化を後押しする仕組み」の中から、限定された条件の下、規制を一時凍結して革新的技術を試用することで、その社会適用に向けた規制改革を検討する「規制の『サンドボックス』制度の創設」について解説します。

2.1 A. 価値の源泉の創出 「データ利活用基盤の構築」

価値の源泉の創出に関する政策である「データ利活用基盤の構築」において掲げられているさまざまな施策のうち、特に民間におけるデータ流通・利活用ビジネスとの関連が強い「公共データのオープン化の推進」「事業者間のデータ流通」「パーソナルデータの利活用」に絞って紹介します。

(1) 公共データのオープン化の推進

日本では、2011年3月11日に起きた東日本大震災の災害対応に役立てるため、政府や地方公共団体、事業者等が保有するデータを公開したことを契機に、公共データを二次利用可能な形で公開し、その活用を促進するオープンデータが推進されてきました。2017年5月に、政府決定された「オープンデータ基本指針」では、今後、国、地方公共団体、事業者が公共データの公開および活用に取り組むうえでの基本方針が示されています。当該指針では、オープンデータの活用を促すため、利用者ニーズに即した形でデータ公開を進めることが定められています。その具体的な施策として、官民ラウンドテーブルについて説明します。

◆ 官民ラウンドテーブルの開催

官民ラウンドテーブルは、民間企業等のデータ活用を希望する者とデータを保有する府省庁、オープンデータの有識者等が集い、民間企業等から具体的に公開要望のあったデータに関し、その公開可否や公開の在り方について直接対話する場です。ここで民間のニーズを把握し、それに一つ一つ応えていくことで、データの価値向上やデータを活用した新サービスの創出、諸課題の解決に貢献することを目的としています。2018年1月25日に開催された第1回官民ラウンドテーブルでは、観光・移動分野を対象として、データの公開を要望する民間企業が、どのようなデータを、どのように活用したいのかについてプレゼンテーションを行い、議論がなされました(図表 2.参照)。

No 要望データ データ保有
府省庁等
要望企業 想定利用シーン 府省庁の見解
区分 データの種類
1 飲食店関連
  • 営業許可申請書、営業許可申請事項変更届
  • 保健所による営業許可・停止状況
  • 廃業届
厚生労働省 ぐるなび レストラン検索サイト上で新規店/廃業店のタイムリーかつ正確な情報を提供 各都道府県等が標準的なフォーマットでデータを公開するよう、内閣官房IT総合戦略室および厚生労働省が連携して、推奨データセットを作成する方向で検討
2 訪日外国人関連 外国人出入国記録を含むデータ
(国籍、年代、性別、現住所(国、都市)、渡航目的、予定滞在期間、入国時の空港/海港、出国時の空港/海港)
法務省 ウィングアーク1st SNSデータとリアルデータを組み合わせ、訪日外国人の日本での目的や行動の調査・分析を観光関連事業者向けに実現
  • 現住所(国、都市)、予定滞在期間以外の項目は、「外国人出入国記録マスタファイル」に電子データで保有。公開希望者の利活用目的にかなう項目に着目した新たな統計の作成・公開について今後検討
  • 匿名化した外国人入国記録上の情報は、行政機関個人情報保護法に基づく非識別加工情報の提案があれば適切に対応
3 免税品購入データ
(購入地域、購入者(国別、年齢別)、購入金額、購入品種別)
国税庁
  • 要望データのベースとなる免税販売のデータには、個人情報と営業上の秘密が含まれる上、税務目的のみでの利用が前提なため、そのままの公開は不可
  • 集計・加工した形での公開は、税務目的以外での利用について法令の手当てを含め、関係省庁と検討
現状、要望データは未電子化。2020年度から免税販売手続が電子化され、データは免税店から国税庁へ送信される予定
4 訪日外国人消費動向調査データ
(・入国空港/海港別、項目への民泊、利用SNSの追加
・更新頻度:1か月
・提供形式:CSVファイル)
国土交通省(観光庁) - -
  • 調査項目への民泊の追加は対応済み。利用SNSは公的統計として出すのはなじまない
  • CSVでの提供は、他の意見も踏まえながら検討
  • 入国空海港別でのデータ提供および更新頻度の短縮は、精度確保のための標本数の増加が必要になることから困難
  • オープンデータではないが、行政機関等との共同研究等、公益性を有する場合は統計法に基づき調査票情報を提供できる可能性があり、要望に応じて適切に対応
5 公共交通関連 リアルタイムの運行情報
(復旧見込み情報/駅の混雑情報/列車ごとの在線位置情報/列車ごとの混雑情報)
国土交通省 ジョルダン 公共交通の経路検索において、リアルタイムな運行情報を加味し、最適な代替ルートや到着予想時間を案内
  • 要望データは民間の交通事業者のデータ。交通事業者にはオープンデータ化のメリットや費用対効果、データ管理の在り方等の課題がある
  • 国土交通省としては、要望データは利用者の利便性の向上に資すると考えており、2018年度以降、実証実験を通じて交通事業者の理解を得ながら、オープンデータ化に向け、引き続き検討
交通事業者のオープンデータ推進に向け設置された「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」は2017年5月、中間整理をとりまとめ
6 駅構内図
(駅施設図面/施設情報(エレベーター・エスカレーター、トイレ等)/エレベーター・エスカレーター(運転方向)・改札等の稼働時間/段差・勾配情報/工事等メンテナンス情報)
国土交通省 従来の駅構内図とは見せ方を変えた案内マップを作成
7 鉄道・バス・船舶、乗合タクシー等、移動手段における以下、情報
  • 路線(経路)
  • 停留場所
  • 時刻表
  • 運行状況(移動体の状態、移動体の経路関連)
国土交通省 凸版印刷
  • 観光客や生活者に時刻表データを基にした移動計画の支援機能を提供
  • リアルタイムな運行状況を 反映し、効率的な移動を支援
*)
関係制度を所管する府省庁等を含む

図表 2.第1回官民ラウンドテーブルにおける議論状況

これまで行政機関は、データ公開による効果が見えないなか、人的にも金銭的にも多大なコストをかけられないという課題を抱えていました。しかし、官民ラウンドテーブルを通じ、必要なデータを、活用シーンと併せて、具体的に要望されるようになることで、データ公開の意義・効果をイメージでき、より意欲的にオープンデータを推進できるようになるでしょう。また、ニーズの高いデータを優先的に公開することで、オープンデータの費用対効果も高まるでしょう。
行政機関が保有するデータの中で、今後、活用が期待されるものの1つが人工衛星の画像データです。すでにイスラエルではUTILISという会社が、人工衛星のマイクロ波画像を基に、地表から1〜3mの深さにある水道管を対象として、0.1リットル/分の水道の漏水を検知するサービスを提供しています。

(2) 事業者間のデータ流通

近年、IoTの普及により、事業活動を通じて生成されるデータが爆発的に増加しています。こうしたデータを事業者の枠を超えて流通させることで、新たな価値創出につながることが期待されています。しかし、自身のデータの利用権限を保護しつつ、ほかの事業者のデータ利用を認める法制度が分かりにくいことから、データをほかの事業者に提供することがためらわれる状況でした。そこで政府は、現行法に矛盾・抵触せず、事業者の取引慣行にもなじむよう、契約の範囲でデータの利用権限を整理することが望ましいとして、事業者が契約を通じてデータの利用権限を公平に取り決めるための考え方を示した「データ利用権限に関する契約ガイドラインVer1.0」を2017年5月に公表しています。このガイドラインに関する施策について説明します。

◆ データ利用権限に関する契約ガイドラインの活用推進・改訂等

「データ利用権限に関する契約ガイドラインVer1.0」では、事業者間の取引を通じて創出されるデータの利用権限を、契約で適正かつ公平に定めるための考え方や合意形成のためのプロセスを提示しています。このガイドライン公開にあたり寄せられたパブリックコメントや有識者からの意見を踏まえ、利活用の促進という観点からデータの利用に関する契約を類型化し、各類型で定めておくべき事項を整理するとともに、新たな分野への対応という観点からAIの開発・利用に関する契約作成時の考慮事項等を追加することとなり、2018年4月現在、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」として、改訂作業が進められています。
「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は大きく「データ編」と「AI編」から構成される見込みです(図表 3参照)。「データ編」では、データの利用を対象とする契約について、類型別にその構造や法的論点、契約の取り決め方法等が示される模様です。「データ利用権限に関する契約ガイドラインVer1.0」では、新たにデータが創出される場面において、データ創出に関与した当事者間でデータの利用権限について取り決めるための契約をスコープとしていましたが、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン データ編」では、これを「データ創出型」契約と整理したうえで、新たな契約類型として「データ提供型」契約および「データ共用型」契約が追加される方向で、改訂作業が行われています。
また、「AI編」では、AIの開発・利用に関する契約を作成する際の考慮要素等が提示される見通しです。

図表 3.AI・データの利用に関する契約ガイドラインの改訂の方向性のイメージ

図表 3.AI・データの利用に関する契約ガイドラインの改訂の方向性

政府は、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン データ編」で挙げられる見込みの類型の中でも、「データ共用型」のデータ流通・利活用の促進に注力しています。2018年通常国会で審議されている「生産性向上特別措置法案」では、産業分野のデータを共有・共用する事業計画を認定し、事業化実証や設備投資に対する減税措置等の支援を行うとされています。すでに、地図データや衛星データ、バイオデータ等の共用事業について検討が進められており、このような分野から事業者間のデータ流通・利活用が進んでいくことが想定されます。

(3) パーソナルデータの利活用

スマートフォンやSNS等の普及に伴い大量に生成されるようになったパーソナルデータは、21世紀における価値ある資源、新しい”石油”と称されるなど、その利用価値に注目が寄せられています。すでにパーソナルデータの獲得に向けた企業買収まで行われるようになっており、例えば、米Facebookは2014年10月、スマートフォン向けメッセージアプリを手がける米WhatsAppを約220億ドルで買収しています。Facebookはその関係会社とともに、WhatsAppが収集する15億人ものユーザー情報を自身のサービス改善等に加え、広告配信にも活用しています。また、米国大手のドラッグストアチェーンCVSヘルスは、2017年12月、米国の大手医療保険会社のエトナを690億ドルで買収することで合意したと発表しており、5,000万人にも上る保険加入者のデータを薬の販促に活用すると目されています。ただし日本では、8割を超える人がパーソナルデータの提供に不安を感じており、欧米諸国と比較しても多い状況です(図表 4参照)。

図表 4.パーソナルデータの提供に対する不安感のイメージ

図表 4.パーソナルデータの提供に対する不安感

パーソナルデータの流通・利活用が盛んに行われるようになるには、こうした不安が払拭されることが重要であることから、政府はそのための仕組みとして、PDS(Personal Data Store)、情報銀行、データ取引市場について検討を進めています。これら三つの仕組みについて紹介します。

◆ PDS(Personal Data Store)

PDSとは、他者が保有するデータの集約も含め、個人が意思を持って自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)で、第三者へのデータの提供に関する制御機能を有しています。PDSには、個人が保有する端末等でデータを蓄積・管理する分散型と、事業者が提供するサーバー等でデータを蓄積・管理する集中型の2種類があります(図表 5参照)。どちらも、個人が自らの意思でどのデータをどの事業者に提供するか管理できるため、自身のデータの共有・活用状況を把握・制御できないという不安は解消できます。

図表 5.PDSのイメージ

図表 5.PDSのイメージ

◆ 情報銀行

情報銀行とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づいてパーソナルデータを管理するとともに、個人に代わって妥当性を判断のうえ、第三者へデータを提供する事業のことです。妥当性の判断は、個人の指示または予め指定した条件下で行われるため、個人に不安を抱かせることなく、データの流通・利活用が促進できます。また、データの提供に対する見返りは、提供先の事業者から直接的(金銭の支払い等)または間接的(事業者サービスの提供等)に還元されるため、自身のデータ活用による便益を理解・実感できないことによる不満の解消につながります(図表 6参照)。

図表 6.情報銀行のイメージ

図表 6.情報銀行のイメージ

◆ データ取引市場

データ取引市場とは、データ保有者と当該データの活用を希望する者を仲介し、売買等による取引を可能とする仕組み(市場)のことです。データ取引市場は、各事業者が保有データを囲い込んでしまっている状況を脱し、事業者の枠を超えたデータの流通・利活用によるイノベーション創出に不可欠な仕組みです。PDSや情報銀行では、パーソナルデータを取り扱うのに対し、データ取引市場は非パーソナルデータ(モノを対象にセンシングしたIoTデータ等)も取り扱うことができます(図表 7参照)。
データ取引市場によって、販売データの概要がカタログとして整備されるようになれば、データの利用希望者は、自らが求めるデータを探しやすくなります。データの品質等についてもカタログに記載されるようになれば、利用希望者はそのデータがニーズに見合ったものかどうかを判断できるようになります。契約やデータ提供の方法も、ある程度統一されるようになれば、プログラムによって自動的に契約・取得することも可能になるでしょう。

図表 7.データ取引市場のイメージ

図表 7.データ取引市場のイメージ

PDSや情報銀行、データ取引市場が普及し、パーソナルデータを収集・利活用しやすくなれば、さまざまな商品やサービスが個人向けに最適化されるようになります。例えば医療機関は、個人の健康モニタリングデータを取得・活用することで、より正確な診断および適切な治療の提供が可能になります。また、宅配事業者がPDSや情報銀行、データ取引市場を活用して配達先の在/不在状況を把握できるようになれば、再配達を削減できるため、宅配サービスの生産性が向上します。生産性の向上は、需給のひっ迫状況を緩和させる一助となり、物流システムの維持という社会課題の解決にもつながるでしょう。

2.2 B. 価値の最大化を後押しする仕組み 「規制の『サンドボックス』制度の創設」

価値の最大化を後押しする仕組みの一つとして、「規制の『サンドボックス』制度の創設」について説明します。
ドローンやブロックチェーンといった新技術は、空を活用した荷物の配送や個人間のお金の貸し借りといったビジネスアイデアを実現可能なものにします。しかし、いざビジネスアイデアを事業化しようとすると、既存の規制に阻まれてしまうことがあります。規制を改革しようにも、当局側は改革をしても問題ないという証拠がないと改革に踏み切れない一方で、新技術を活用したい事業者側は、規制が邪魔をして証拠を集めるための実証実験もできないというジレンマに陥ってしまうため、往々にして思うように進みません。このような状況を踏まえ、英国で誕生したのが規制の「サンドボックス」制度です。規制の「サンドボックス」制度とは、限定した期間・エリア内において、現行法の規制を一時的に凍結し、新技術やそれを活用したビジネスアイデアの実証を可能とするもので、規制改革に向けた証拠集めの場となります。
グローバル化が進み、ビジネスの拡大スピードが勝敗の分かれ目となる時代において、いち早くアイデアを事業化し、社会に提供できる環境を提供できるかどうかが競争力の鍵となるため、政府は規制の「サンドボックス」制度の創設をめざしています。具体的には、企業が提案した実証実験に対する規制を都度緩和する「プロジェクト型」と、地域を限定して自動走行等の新技術の実証実験に関する規制緩和メニューを予め用意する「地域限定型」の2種類の規制の「サンドボックス」制度の創設に向けた準備を進めています。「プロジェクト型」の規制の「サンドボックス」制度は、「生産性向上特別措置法案」の一部として、「地域限定型」は、「国家戦略特区域法の一部を改正する法律案」として2018年通常国会において審議されています。
規制の「サンドボックス」制度を通じて、実証が期待されている技術の1つが、高速電力線通信技術です。高速電力線通信技術は、建物や電柱に張り巡らされた電線を通信回路として利用する技術ですが、現行の電波法の規制により、屋外や工場内の利用が制限されています。規制の「サンドボックス」制度によって規制が凍結されれば、既存の電柱にネットワークでつながったカメラや受信機を設置することで、安価に防犯・見守りサービスを実現できるようになります(図表 8参照)。また、工場内の電力線を活用すれば、低コストに工作機械をIoT化し、生産設備の稼働状況を見える化等できるようになります。

図表 8.高速電力線通信技術を活用した防犯・見守りサービスのイメージ

図表 8.高速電力線通信技術を活用した防犯・見守りサービスのイメージ

現状、規制の「サンドボックス」制度は、国単位で整備されています。しかし、金融分野等では、国をまたいで実証が求められるようなものもあるため、今後は、規制の「サンドボックス」制度の国際連携が必要になるでしょう。規制の「サンドボックス」制度の生みの親である英国の金融規制当局FCA(Financial Conduct Authority)は、複数国間で同時にFintechに関する実験ができるグローバルな規制の「サンドボックス」制度の創出に向けた検討を始めています。このような状況を鑑み、日本でも分野によっては、規制の「サンドボックス」制度の国際連携を進めていくことが期待されます。

3 まとめ

今回は、「未来投資戦略2017」のうち「Society 5.0に向けた横割課題」について紹介しました。ここでは、AIやIoT、ロボットといった革新的技術の発展・普及に伴い生じる産業構造の転換や個々人に求められるスキル・能力の変化を見据え、分野共通的に取り組むべき施策が示されています。本稿で紹介した、革新的技術の活用に必要なデータの利活用環境の整備や規制の「サンドボックス」制度の創設については、Society 5.0を実現する肝となる施策と考えられており、今後も動向が注目されます。次回以降のコラムでは、Society 5.0の実現に向けた具体的な施策に一つ一つフォーカスして解説していきます。

本コラム執筆コンサルタント

田中 総一郎株式会社 日立コンサルティング コンサルタント

「Society 5.0(ソサエティ5.0)」という言葉が世に出て2年あまりが経過しました。
ようやく政府も広報活動に力を入れ、新聞広告を出したり、政府広報オンライン上で『ソサエティ5.0「すぐそこの未来」篇』という動画を公開したりするようになりましたが、世間の認知度はまだまだ低いのではないでしょうか。
Society 5.0は、IoT、AI、ロボットを中心とした先端技術によって社会課題を解決していこうという、日本政府が提唱する科学技術政策の基本指針の一つですが、人類史上5番目の新しい社会(Society)と表現されているとおり、私たちの生活の姿、そして社会の在り方までをも変えうるイノベ−ションによって、今後の日本はもちろん、世界を大きく左右する可能性を秘めています。現在安倍総理が進めている「生産性改革」を実現するための重要なファクタ−の一つでもあり、政府も取り組みに力を入れています。本コラムでは複数回にわたって「Society 5.0」とは何か、世の中をどう変えていくものかを解説していきますが、Society 5.0を実現するために、今後、政府が行う施策をまとめた「未来投資戦略2017」について紹介します。

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。

Search日立コンサルティングのサイト内検索