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第2回 生成AIがもたらす働き方の未来 1

岡田 航汰 株式会社 日立コンサルティング シニアコンサルタント

2023年10月27日

はじめに

2022年のChatGPT1の登場以来、日本でも多くの企業が生成AIの業務活用を模索しています。「エマージングテクノロジーの時代」第2回では、この生成AIを取り上げ、企業の業務革新にどのような可能性をもたらすのか検討します。

抜本的な生産性向上が急務

多くの企業が生成AIに注目する背景には、DX2をさらに推し進め、抜本的な生産性の向上を図らなければならないという危機感があります。
グローバル化や消費者の価値観の多様化、Afterコロナの生活習慣の変化など、企業が自社の競争力を高めるべき理由には枚挙にいとまがありません。
一方で、日本の生産労働人口は減少の一途であり、2021年と比較して2050年までに約30%減少3すると予想されています。また、2019年以降、働き方改革や長時間残業の規制が強化され、一般労働者一人当たりの労働時間は2021年までに約3.2%減少4しました。
「これまでより少ない人数、少ない時間で、これまで以上の競争力を生み出す」ことは日本企業の共通の課題であると言えます。

生成AIはデジタルの適用領域を拡大する

そのような中で、企業の生産性を大きく向上させる技術として注目されているのが生成AIです。

生成AIの基本的な特徴は、ユーザーから入力された自然言語のタスクを受け取り、回答を自然言語で生成することです。例えば、「東京近郊の代表的な観光地を教えて」と入力すると、「箱根、鎌倉、横浜、日光…」といくつかの観光地を挙げました。
この特徴から読み取るべき重要なポイントは、生成AIが曖昧な入力や出力を許容できるデジタル技術であるということです。先ほどの例では、「近郊」とはどの程度の距離のことなのか、「代表的」とはどのくらい知られていることなのか、明確なパラメータを定義していません。生成AIが文として自然だと判断する範囲で解釈して回答しています。

従来のRPAやシステム化は、定型的な業務を大量に実行することを得意とする反面、このような非定型要素が入り込むことを非常に苦手とします。細かな例外が多い仕事や条件が毎回微妙に変わる処理、表記ゆれが多い文書には適用できず、特にホワイトカラーの業務を中心に、「単純だが非定型」な業務が効率化されず残っていました。

翻って生成AIが大きく注目されているのは、高い自然言語処理能力によってこれらの非定型的な要素をうまく緩衝し、デジタルの適用領域を広げる可能性を持っているからです。まさに、これまでは人間にしかできなかった仕事の生産性を向上させる技術だと考えます。

生成AIによる生産性向上のターゲットのイメージ図

生産性向上にとどまらず、生成AIをサービスに取り入れることで顧客のユーザー体験を大きく向上させる可能性についても注目されています。
弊社コンサルタントが参加した、てい談「生成AIとルールベース型チャットボットのハイブリッドが生み出す顧客接点の未来」を合わせてご覧ください。

1
ChatGPTはOpenAI OpCo, LLCの登録商標です。
2
DX:Digital Transformationの略語。デジタルテクノロジーをテコに、別のビジネスモデルに変革すること。英語圏では慣習的に「交差する・横切る」を表す接頭語である“trans”の略語には、Xが用いられるため、“DT”ではなく“DX”という略語が用いられる。
3
「令和4年版 情報通信白書」(総務省)(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html)を基に記載。
4
「労働時間制度の現状等について」(厚生労働省)(000981929.pdf (mhlw.go.jp))を基に、株式会社日立コンサルティングが算出。

[参考文献]

本文内に記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。

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