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「プロジェクトが遅れない理由」も数値化できる

荒浪 篤史 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

2011年5月25日

スケジュール管理における見える化の全プロセスであるが、課題管理と等しく、KPI設定→モニタリング→評価と、大きく3つのプロセスより構成され、プロセス設計にあたっての留意事項も等しい。

1、KPI設定

課題管理と同様「スケジュール管理は、何のためにやるのだろう」と考えるとわかりやすい。スケジュール管理の目的は、「進捗を認識し、必要に応じて調整や介入し、遅延やリスケを防止する」と定義できないだろうか。目的の定義ができたならば、遅延やリスケを防止するために講じた手段の量や度合い、達成度を認識できる指標をKPIとすれば良いのであるが、PMOのスケジュール管理は、図1の通り、とても複雑かつ高度な作業である。折角なので、しっかりとその大変さのポイントを理解してもらい、そのポイントをKPIに設定できれば一石二鳥ではないだろうか。

PMOのスケジュール管理

そこで設定したKPIが、「管理対象数」「調整介入数」「マイルストーン遵守率」の3つである。それぞれを簡単に説明すると下記の通りである。

設定したKPIの「管理対象数」「調整介入数」「マイルストーン遵守率」

課題管理の場合は、この課題を見逃したら、または、放置したらどうなったかという想定被害から「重み」の付与もできたが、スケジュール管理においては遅延を放置したら・・という仮説はあまりにも稚拙なので論外として、マイルストーンの重要度などでの重み付けも考えられるので、余裕があれば検討してみてはどうだろうか。

2、モニタリング

KPIが明確になったら、次はそれを如何に収集・記録するかの検討だが、これは一般的なスケジュール管理のスキームに付加するだけでいいだろう。管理対象数については、PMOでひとつ台帳のようなものを用意し、差分が生じた場合にメンテナンスすればよい。次に、調整介入数、これは少々力を入れておきたい。調整介入に至った経緯、課題、対策内容、関連システム数やステークホルダー数などこの成果の重みをアピールできるインプットがあれば都度記録しておこう。最後に、マイルストーン遵守率であるが、これはステアリングコミッティなど定期的な活動報告の場に向け集計すれば良い。

定常的モニタリング作業は左程各PMOメンバの手間にはならないことが理解して頂いたと思う。一方、PMOのリーダーに対しては、管理対象数に基づき各メンバの負荷を均一化したり、調整介入方法へのアドバイスやメンバ補完したりといったマネジメントにも活用できるだろう。

3、評価 整合性管理+不整合検出・対策=マイルストーン遵守率

さて、いよいよ成果の評価である。またまた繰り返しだが、「Aさん(皆さんである)、プロジェクトは無事終了したわけだけど、Aさん率いるPMOはどの位貢献したの?プロジェクトメンバの自助努力の結果じゃないの?」にズバッと回答するのである。

これだけ多くの管理対象の進捗と整合性を常時監視し、進捗や整合性の課題・リスクを検出し、必要であれば調整介入するというPMO活動の結果、マイルストーンは遵守できている。すなわち、マイルストーン遵守にPMOは大いに貢献しているという論理である。逆に言えば、調整介入が全くないのであれば、説得力がなくなる論理なので状況に応じてトーンを工夫して頂く必要がある。ただ、個人的には調整介入こそPMOの真骨頂だと思うので、是非とも積極的なスケジュール管理を志向してみてはどうだろう。

整合性管理+不整合検出・対策=マイルストーン遵守率

加えて、KPI(2)の補足として、調整介入事案の関連システム数やステークホルダー数など、対策の難易度を示すデータを添えると迫力が増すだろう。

最後に、繰り返しになるが、スケジュール管理は経験者にとっては難易度が高い作業であることは総意なのだから、その苦労や成果はアピールすべきだと思う。KPIを積極的に開示することでユーザーに安心感をあたえること、他社と差別化できること、そして何より、自分たちの活動成果を定量的に認識することによる自己改善につながっていくものである。

本コラム執筆コンサルタント

荒浪 篤史 株式会社 日立コンサルティング ディレクター

世の中には「プロジェクト」と名の付く取組みがあちこちで実施されていますが、その成功率は20%以下と言われており、特に大規模なプロジェクトでは5%程度という報告も見られます。プロジェクトの進捗やリソース、重要課題を「見える化」し成功に導く羅針盤、PMO(Project Management Office)の活用ポイントをご紹介します。

※記載内容(所属部署・役職を含む)は制作当時のものです。

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