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第1回 Beyond Digitalとしてのエマージングテクノロジー 2

2023年4月27日

2.Beyond Digitalにおける社会動向

2023年現在、ここまで語ってきた「デジタル時代」はどのような形になってきているのでしょうか。われわれは「大きく進展してきているものの、あいろに陥っている」というのが実情と捉えています。あいろに陥った要因の1つとして、デジタル化/DXが「効率化の手段」にわい小化されてしまったことがあります。2010年代後半から、大手企業だけでなく、中堅・中小企業にデジタル化/DXが広まるにつれて、多くの企業がデジタルテクノロジーを「効率化の手段」と見るようになってきました。Operational Excellence7に強みがある日本企業では、現場ドリブンでの変革が求められることも多いため、ある意味で仕方がない面もあります。しかし、RPAなどの手作業の自動化まで“DX”と呼ぶような現状では、デジタルテクノロジーが持つ本来のケイパビリティーを十分に活用できていないとも言えるでしょう。

では、市場の先を見ている、投資家などは現在の状況をどのように捉えているのでしょうか。彼らはデジタル時代ではなくその次、“Beyond Digital”を模索し始めています。つまりデジタルテクノロジーによる事業や業務変革の先にある、破壊的な変化をもたらす「エマージングテクノロジー」の探索と、それらを用いたイノベーションに関心が移っているのです。

一部の例にはなりますが、2020年前後で、エマージングテクノロジーは各種イベント、レポートなどで取り上げられるようになってきました。

  • The World Economic Forum: “Top 10 Emerging Technologies8”を発表
  • Gartner: 「Emerging Techのハイプ・サイクル9」を発表
  • MIT Technology Review: 日本版を2016年に創刊し、以降年次で、“10 Breakthrough Technologies10”を発表
  • Scientific American(日経サイエンス): Emerging Technology11の特集記事を掲載

これらの動向は、デジタル時代のやり方が単に終えんしつつあるというよりも、デジタル時代に分かってきたことである「一歩先を見据えて、イノベーティブな技術革新の予兆をあらかじめ捉えておき、次のイノベーションに向けた準備やエコシステム構築を進める」という姿勢をエマージングテクノロジーに適用していると言った方が正しいと考えています。

7
Operational Excellence:業務の遂行力、効率化で競争優位性を確保すること。
8
World Economic Forum:https://jp.weforum.org/reports/top-10-emerging-technologies-of-2021
9
Gartnerのハイプ・サイクル:Gartner、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表
10
MIT Technology Review:10 Breakthrough Technologies 2023 | MIT Technology Review
11
Scientific American:Top 10 Emerging Technologies for 2021 - Scientific American

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