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第1回 Beyond Digitalとしてのエマージングテクノロジー 4

2023年4月27日

4.エマテク時代のイノベーションポイント

ここまでエマージングテクノロジーの特徴について概観してきましたが、仮に2020年代を「エマテク時代」と置いた場合、これまでの「IT時代」「デジタル時代」と異なり、どのようなケイパビリティーが求められるのでしょうか。またどういった観点で変革のパートナーであるコンサルティングファームが選ばれるのでしょうか。われわれは「研究=サイエンス領域」にポイントがあると考えています。

イメージ図

90年代以降、定型業務における処理の自動化が中心だったIT時代においては、競争優位性を確立するポイントは選定するIT製品(パッケージ、クラウドサービスなど)の使いこなしにありました。そのため、IT製品と現行業務のすり合わせが重要となり、イノベーションを起こすためのポイントはBPR14(+SI15)をいかに進めるかにありました。変革パートナーであるコンサルティングファームには業務知識、パッケージを含めたIT知識、ウォーターフォールでのプロジェクトマネジメントなどが求められていました。

一方、2010年代からの「デジタル時代」において競争優位性を確立するポイントは、顧客接点を中心としたコア業務に対するデジタルテクノロジーの使いこなしであり、イノベーションを起こすためのポイントは基礎技術であるデジタルテクノロジーを活用してサービス・事業創生をいかに進めるかにありました。変革パートナーであるコンサルティングファームにはIT時代のケイパビリティーに加えて、デジタル/データ分析、デザイン思考、アジャイルプロジェクトのスキルなどが求められるようになってきました。

2020年代の「エマテク時代」を見据えると、競争優位性を確立するポイントは、まだ研究段階にある基礎技術であるエマージングテクノロジーをいかに事業と結び付けられるかになってくると推察します。「デジタル時代」、AIやセンシングなどのデジタルテクノロジーは、マーケットでの利用が加速するとともに成熟し、イノベーションが生まれてきました。一方で、「エマテク時代」は技術の成熟を待つことなく、先端テクノロジーの研究と事業化が同時進行する時代になるのではないかと考えています。そのため、変革パートナーであるコンサルティングファームには、デジタル時代のケイパビリティーに加えて、新たに「サイエンスの素養」「研究と事業を結び付ける能力」が求められるのだと認識しています。

14
BPR: Business Process Re-engineeringの略称。業務の全体最適をめざして、業務プロセスの観点から業務フロー、管理方法、情報システムなどを抜本的に見直し、再設計すること。
15
SI:System Integrationの略称。企業のシステム構築を請け負うITサービスのこと。

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